著者
駒澤 正夫
出版者
日本測地学会
雑誌
測地学会誌 (ISSN:00380830)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.17-45, 1995-03-25 (Released:2011-07-05)
参考文献数
48

阿蘇火山およびその周辺域について重力データの収集と補間測定を行ない,阿蘇火山の微細なブーゲー異常と密度構造を明らかにした.カルデラ構造を不鮮明にしている表層の火砕物や堆積物の効果をはぎ取るために,上方接続残差分散比較法(CVUR法)を提案する.その方法を適用した結果,阿蘇火山の表層密度は2.2~2.39/cm 3と妥当な値を得た. 測点数が増したことにより,阿蘇カルデラが漏斗型(倒立円錐状)の構造をもった単純な「低重力タイプのカルデラ」ではなく,5つの低重力異常域が南北に並んでいることが判明した.また,個々の低重力異常域はカルデラ壁の内側で急勾配をもつが,低重力異常の中心部では底が平坦であることもわかった. カルデラ内の湖性堆積物や火砕堆積層の層厚の見積もりのモデルとして,表層上面と基盤面(表層下面)にそれぞれ面的に密度変化を与え,その両面を2次式で接続させるものを想定し,その構造に基づく3次元解析法を新たに提案する.その結果,重力基盤構造は,カルデラ内で急傾斜で500mほど陥没し,カルデラ内の5つの低重力異常域に対応してさらに200~400mほどの陥没があり,底は平坦である.重力基盤構造からは,阿蘇カルデラが濁川カルデラのように巨大な爆裂による「漏斗型カルデラ」とは読み取れず,大規模な陥没を伴ったValles-typeといわれる「ピストン・シリンダー型」に類似する構造が配列することがわかった.また,中央火口丘からその北側には,周辺域より0.1g/cm 3ほど密度の小さい基盤が推定され,深部との連続性とともに,陥没域には,強溶結した溶結凝灰岩や火砕流の存在が考えられる.
著者
名和一成 村田泰章 駒澤 正夫 森尻 理恵 広島 俊男 牧野 雅彦 村上 文敏 岸本 清行 大熊 茂雄 志知 龍一
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5-6, pp.183-208, 2005-08-15 (Released:2014-10-25)
参考文献数
41
被引用文献数
1 2

産総研地質調査総合センターでは,20 万分の1重力図の系統的整備を行っている.新たに測定したものを加えた陸域の重力データと,地質調査所GH83-1航海で測定した海域の重力データを統一的に処理・編集して,「宮崎地域重力図(ブーゲー異常)」を出版した.この重力図には,宮崎沖堆積盆地や九州外帯の屈曲構造に対応する長波長の異常や,人吉・小林・都城盆地に対応する短波長の異常が見られる.また,短波長を抽出したフィルター図では,宮崎平野下の負異常や,過去の研究でも指摘された宮崎平野北部と西部の高重力異常が確認できる.一方,九州山地にも高重力異常が分布するが,重力補正に用いた仮定密度と実際の山体の密度との差から生じる見かけのものである.このため,基盤構造推定に利用する際には,地形の影響を考慮する必要がある.
著者
駒澤 正夫 ホセ パンティーク エディー リスタンコ
出版者
Tokyo Geographical Society
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.123, no.1, pp.133-142, 2014
被引用文献数
3

イロシンカルデラの地下構造を把握するため1996年2月にBulusan火山およびその周辺で重力調査を実施した。測点は標高の低い山麓の道沿いに限られ,測定数は225点となった。火山の山体に近い密度である 2,300 kg/m<sup>3</sup>(2.3 g/cm<sup>3</sup>)の仮定密度のブーゲー異常図は,山体部に測点がなくても実際の重力異常を表すと考えられる。重力異常にはカルデラ壁に対応する急勾配がBulusan火山の東から南を経て西に存在することがわかった。しかし,カルデラの北縁については勾配構造が明瞭ではなかった。Irosin townは急勾配構造の内側にある低重力異常域にある。重力の3次元解析から得られた重力基盤にはカルデラ壁を含むカルデラ領域を示す直径 15 kmほどの円形構造があることがわかった。さらに,その円形構造の内側には直径 5 kmほどの急勾配の壁で仕切られた漏斗状(上下逆さまの円錐)の構造が存在し,深さは 1.5 kmに達することがわかった。つまり,イロシンカルデラは,陥没構造が一カ所だけ確認でき,大量の火山砕屑物の噴出を伴った大規模噴火(複数回の場合も含む)は,ごく狭い領域に限られることを示している。また,重力異常による質量欠損の計算から約 40 km<sup>3</sup>の領域から1.1 × 10<sup>10</sup> トンの火山砕屑物を噴出したと推定され,既存のカルデラの直径と質量欠損の関係と整合的である。