著者
ホッペ グンナー 岩田 修二
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.90, no.2, pp.62-72, 1981-04-25 (Released:2010-11-18)

ヴァイクゼル氷期 (最終氷期) に広く氷床におおわれたスカンジナビアや北極海の島じまのなかに, 氷におおわれることからまぬがれた地域があったかどうかは, 生物学と地球科学における重要な問題になっている。この問題に加えて, 氷床の大きさと海面変化との関係, 過去の気候条件などの問題を解決するために, ストックホルム大学の自然地理学教室では, 過去25年間にわたって数多くの探険・調査をおこなってきた。氷河擦痕からみて, シェットランド島は, ヴァイクゼル氷期には東側から拡大してきた氷床 (スカンジナビア氷床) によって完全におおわれたことがあった。その後一時期, 島は, スカンジナビア氷床から分離した孤立アイスキャップにおおわれていた。スバールバード周辺では, 隆起汀線から知られた解氷後の地盤隆起と, 氷河の擦痕から, 次のような氷河の変遷があきらかになった。まず, 氷河が拡大し, それぞれの島ごとにアイスキャップをつくり, 次にそれらが合体して大きな氷床になった。最大拡張期には, バレンツ海に氷床の中心があった。その後, 氷河の拡大とは逆の変遷をへて氷河は現在の状態にまで縮小したヴァイクゼル氷期のアイスランドは, 小さなヌナタックをのぞいて, 大陸だなのへりまで氷床におおわれていたことがあきらかになった。これらをまとめると, ノルウェー海をとりまく地域では, ヴァイクゼル氷期には, 現在の海岸線までは確実に, おそらくは大陸だなのへりまで氷床におおわれていたといえる。しかし, バレンツ海の氷床の範囲はまだよくわかっておらず, 1980年におこなわれるイーメル80の調査に大きな期待がかけられている。
著者
ホッペ グンナー 岩田 修二
出版者
Tokyo Geographical Society
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.90, no.2, pp.85-92, 1981

せまい地域から地球的規模までの自然の理解や環境悪化の監視のための重要な方法であるリモートセンシング技術の最近の発展はたいへんめざましい。この技術がもっとも有効に利用されているのは低緯度地域においてであるが, 高緯度地域においても有効な技術であることはいうまでもない。<BR>米・ソの二大国が主導的な位置をしめるリモートセンシングの技術開発のなかにあって, スウェーデンは, ハッセルブラッドのカメラシステムとAGA赤外テレビシステムの開発という2つの重要な貢献をしている。<BR>スウェーデンにおける空中写真の利用は80年前に始まり, 氷河調査, 地形図・土地利用図の作製, 森林管理, 地形・地質の調査などに役立つてきた。空中写真利用の最近の興味深い例には, 北西スウェーデン山岳地域の開発計画のための組織的な空中写真判読作業や, 赤外カラー写真を利用した沿岸地域における海底地形図の作製, 森林帯における樹木の活性度の判定がある。空中写真の情報を数値化する試みも古くからおこなわれ, いくつかの映像読みとりシステムが開発された。また, 可視光と近赤外以外の波長域をカバーする装置も開発された。1973年には, リモートセンシング5力年計画として以下のものがとりあげられた。各種のセンサーを用いる全天候型のオイルもれ検知システム, 各国との協力で多様な方法を用いる海氷探知計画, マルチスペクトルスキャナーを用いた完全自動植生図化作業, レーザーを用いたばい煙検知システム。<BR>スウェーデンは人工衛星によるリモートセンシングにも古くから関心をもっていた。気象衛星の利用, ランドサットの映像の地質調査への応用などに始まって, 最近ではマルチスペクトルデーターを森林管理のために利用するためのコンピューターシステムが開発された。さらに, 土地利用地図のための自動図化装置の開発, バルチック海の生態系の解明のための技術開発などがおこなわれている。最近の重要な前進は, スウェーデン北部に衛星受信基地の建設が決定されたことである。あらたに始まろうとしている第二次5力年計画では, 将来打ちあげられる人工衛星からの情報の高度な利用が計画されている。なかでも, 1984年にフランスから打ちあげられる予定の衛星に対しては, スウェーデンも費用を負担しており, 高度な利用が期待されている。