著者
ポーター 倫子
出版者
日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.73-84, 2011-08-30

この縦断的ケーススタディでは,自閉症児の制限された興味(こだわり)を発展する援助方法としてのプロジェクト・アプローチの有効性を検討することを目的とする。研究対象は,高機能自閉症児である筆者の息子であり,幼少の頃より列車に特別な興味を示してきた。幼児教育者である筆者は,息子が3歳半より列車に関するプロジェクトを家庭保育の中で導入してきた。実践の結果,プロジェクト・アプローチの形態を参考にした3つの方略,(1)ウェブを作成することで興味の対象を計画的に様々な方向へ広げること,(2)熟練した遊び手と関わる経験を提供すること,(3)様々な媒体を通して自分の思いやイメージを表現するドキュメンテーションの機会を与えること,が自閉症児のこだわりに教育的意義を持たせ,遊びのスキルを高める効果的な方法であることが示唆された。