著者
横井 紘子
出版者
日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.12-22, 2007-08-30

The purpose of this study is to examine the development of play itself through elucidation of the mode of being and the transformation of play, based on play theory by K. Nishimura and H-G. Gadamer. The fundamental sense of playing is the medial one ; the basic structure of "play" is the movement backward and forward. In addition, "play" contains elements of self-presentation. Starting from concepts of "play" like these, the mode of being and transformation of "play" are examined through observing children's play episodes. The results suggest that the transformation of "play" itself is not single-track way used commonly in the sense of the word "development". It is necessary to reconstruct a developmental theory on "play" itself based on the appreciation of the mode of being of "play".
著者
川嶋 健太郎
出版者
一般社団法人 日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.18-28, 2017 (Released:2018-03-16)
参考文献数
13

本研究では子どもの選択・意思決定を支援するプロセスの全体像を理解するために,幼稚園教諭9名を対象に幼稚園における選択場面での支援について半構造化面接によるインタビューを実施し,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)によって意思決定の発達への幼稚園教諭の支援について質的に検討した。この結果,24の概念と5つのカテゴリーが生成された。子どもの選択・意思決定場面において幼稚園教諭の行う支援のプロセスは次のようなものであった。「支援の準備」では幼稚園教諭は日常の保育で子どもを理解し,選択肢について教育する。次に個々の選択場面で「子どもが選べる選択肢を設定」する。「迷いへの支援」では迷う子どもを見守り,選択を促す。「拒否への支援」では選択を拒否する子どもを見守り,必要ならば説得をする。「こだわりへの支援」では適切な選択をするよう誘導する。
著者
宮田 まり子
出版者
日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.50-60, 2013-08-31

本研究は,幼稚園の保育場面を観察し,大型積み木で遊ぶ3歳児の行為と構造の変化から,積み木遊びにおいて何を体験し,他者とどのように協働していくのか,その過程を明らかにする。積み木は,フレーベルの恩物からの流れを持ち,幼稚園創設以来多くの園に設置されているが,積み木遊びの固有性に関する研究は数少なく,実際の保育場面における積み木遊びについてはあまり述べられてこなかった。本研究では,A幼稚園3歳児の1年間(内68日間)を観察し,積み木遊びで見られた特徴的な行為に着目し,事例を作成した。分析の結果,活動の質の変化から,(1)目的の出現と相違の時期,(2)イメージの相違と共有化に向かう時期,(3)協働の時期の3つの時期に分けられた。
著者
品川 ひろみ
出版者
日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.224-235, 2011-12-25

本研究は日系ブラジル人が多く入所する保育所において,通訳がどのような役割を果しているのかについて,保育士に対するアンケート調査,園長に対するインタビュー調査をもとに,「日常の保育」と「文化の保障」という二つの視点で検討した。その結果,「日常の保育」においては,通訳の存在は大変重要であり,通訳がいることで子どもや保護者へのコミュニケーションがスムーズにいき,細かいところにまで配慮した保育が実現できることがわかった。「文化の保障」についても,通訳が子どもの母語や文化を保障する役割としても機能していることがわかった。一方で,日本人保育士たちは多様な考えをもち,必ずしも文化の保障が必要であるとは考えていない者も見られた。また,通訳が常駐している保育所と,巡回型の保育所では,通訳の役割そのものは,どちらも同じように重要であったが,巡回型では時間的な制約があり,十分な関わりができない面も確認された。
著者
河崎 道夫
出版者
日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.12-21, 2008-08-30
被引用文献数
3

There have been two radical changes in the history of children's play in the past half-century in Japan. The first change began in the 1960s: the period of Japanese rapid economic growth. During this period, children began to lose the three essential factors of play: time, space, and company. Gradually, fewer and fewer children were seen playing outdoors, such as running around with their friends. Many kinds of children's play that had accumulated over time as historical constructs began to be lost. This fundamental change continued, with the second radical change occurring in the late 1980s. At that time, technological development of electronic devices and expressive media produced massive amounts of expressive cultural goods for children such as game software, video software, and picture books. These artificial, fantastical, and imaginative products created a big market targeted at children. Consequently, children's interactive play with the real world, especially nature, changed into play with expressive electronic cultural products. This tendency changed children's play radically from interactive, physical, and creative play to more passive activities. Today, children are likely to play alone indoors without physical activities. It is feared that these changes will have harmful effects on children's mental and physical development.
著者
岩田 恵子
出版者
日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.157-167, 2011-12-25

本研究においては,幼稚園における子どもたちの仲間づくりが,社会的集団のあり方と相互規定的なものとして存在することを前提として,子どもたちの仲間集団の形成とそのプロセスにみられる「排除」「いざこざ」の意味を問い直すことを目的とした。3年保育の幼稚園における子どもたちの自由遊び場面におけるやりとりの事例分析の結果,子どもたちは不安定な中で小さな共通点から「安心」できる場の形成を試み,それとともに「排除」ととれる行為が構成されていること,ただし,そのままの状態には留まらず,多様な関係の可能性をさぐる「いざこざ」の中で他者を理解した上での「信頼」関係の形成が試みられることが見出された。幼児期の仲間集団の形成は,個々の社会的なスキルを身につける側面からだけではなく,集団のダイナミクスからその行為の意味を検討する必要が示唆された。
著者
河邉 貴子
出版者
日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.296-305, 2015-12-25

本稿の目的は,子どもの育ち合いを考える際には関係論的な視点だけでなく,文化的実践としての遊び理解の視座が必要であると論じることである。子どもは身近な環境にかかわることによって,環境の潜在的可能性を引き出しつつ,遊びの課題を生成し,そのことによって遊びの状況を絶えず更新している。このようなプロセスが保障される遊びこそ質の高い遊びであり,育ち合いが保障される。保育者は子どもの遊び課題と遊びの状況を理解し,援助の方策を考える必要がある。
著者
椨 瑞希子
出版者
一般社団法人 日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.132-143, 2017 (Released:2018-03-16)
参考文献数
35

イギリスの保育は,過去20年で大きな変貌を遂げた。制度整備の遅れは克服され,ほぼすべての3,4歳児が無償保育を享受する。無償枠は,2歳児の40%に拡大され,無償時間は,2017年9月から2倍になる。本稿は1990年代以降の保育政策研究と政策文書に基づいて,保育無償化の歴史的背景とその展開を明らかにし,その特質について考察する。市場主義の功罪と,親の選択権の過度な尊重が,子どもの安寧を脅かしている現状を報告し,適切な生活時間の公的保障の必要性を訴える。
著者
諏訪 きぬ
出版者
一般社団法人 日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.46-56, 2017

<p>子どもの生活に対する家庭の役割は押しなべて脆弱化し,社会的な支援が必要不可欠となっている。学童期の子どもの場合も例外ではない。小学校における学習・遊び・生活(学校給食)による子どもの生活権・発達権保障の役割は大きいし,放課後の学童の生活を学童保育によって守られている子どもも100万人を超えている。ここでは学童保育の運営に着手して日の浅い学童保育のフィールドワークとアンケート調査を通して,学童保育がどう家庭・学校・地域と連携しようとしているか,事例的にその実態を明らかにする。</p>
著者
松井 剛太
出版者
日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.295-306, 2013-12-25

本研究の目的は,障害のある子どもがいる保育にとって,すべての子どもが充実した遊びを行うための示唆を提起することであった。研究方法として,特別支援学校幼稚部の遊びを分析対象とした。その結果,以下のポイントが明らかになった。第1に障害特性論から脱却することが遊びの充実につながること,第2に,個々の子どもの遊びの構えに着目すること,第3に,遊び込むための構造化を考えること,第4に,集団のノリを生むための教師の役割を振り返ること,であった。最後に,障害特性論の脱却のためには,保育独自の個別の指導計画の開発が必要であることを提起した。
著者
佐川 早季子
出版者
日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.163-175, 2013-12-25

本研究は,幼児の共同的造形遊びにおけるモチーフ生成のプロセスを明らかにすることを目的とする。幼稚園の4・5歳児クラスを半年間参与観察し,幼児がモチーフを生み出すプロセスを,言語的・非言語的やりとりの両面に着目して分析した。注視方向に着目した分析から,幼児が遊び相手の制作物を注視して制作方法に関する情報を取得し自分のモチーフをつくり出す過程で,注意がいったん造形遊びから逸脱する行動が見られた。これは,他児のアイデアを自分のものに変えるために必要な過程であることが示唆される。そして,交互に行われるモチーフの言語化が造形遊びに新しいアイデアをもたらす提案となり,造形遊びを協働的かつ即興的に展開させていた。
著者
湯浅 阿貴子
出版者
日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.248-260, 2015-12-25

本研究の目的はゲーム遊びで生起した「ずる」の場面に着目し,「ずる」が継続的に観察された幼児の行動記録から行動の変容プロセスを明らかにした。その際,他者との相互交渉が幼児の意識及び行動の変容を促す要因と繋がっているのかについて検討した。結果,(1)望んだ状況にするための「ずる」が一定期間繰り返されることによって周囲が疑問を抱くようになる,(2)周囲の幼児が「ずる」に対して疑問や不満を抱き,指摘するようになる,(3)「ずる」を行う幼児が指摘を受け,自身の行動の意味や結果について考える機会を得る,(4)突然変化するものではなく徐々に変容していく,という4つの段階を経ていることが明らかとなった。
著者
谷川 夏実
出版者
日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.105-116, 2013-08-31

本研究の目的は,新任保育者の危機を通じた専門的成長について,省察を手がかりとして明らかにすることである。省察をとらえる視点として<(1)問題状況のとらえ方の変容><(2)実践に取り組む姿勢の変容>に着目し,幼稚園教諭2名の,1年余りに渡る継続的なインタビューデータを分析した結果,それぞれの新任保育者に固有のリアリティ・ショックとそれに伴う省察がみられ,省察を通じた専門的成長を読み取ることができた。この結果から,新任保育者が省察によって問題状況を解釈する枠組みを獲得し,それに基づき実践に取り組む姿勢に変容がみられるまでには,一定の期間と機会を与えられることが必要だということが示唆された。
著者
志村 裕子
出版者
日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.58-68, 2010-08-30

本稿の目的は,子どもの描いた絵の中の物語を理解する方法をみつけることである。本稿では,子どもの描いたタイプの違う絵と一人の子どもの描いた複数の絵を,物語論(ナラトロジー)の観点から分析した。その結果,絵の中に主人公をみつけることとその主人公と作者である子どもの距離関係を知ることによって,物語世界の質すなわちモードの違いをみつけ,それを子どもの絵の物語を理解するための糸口とすることができた。