著者
マッケナ キースパトリック
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

プロジェクトの提案課題(1-3)に則して、以下に個別の結果をまとめる。1.手法の開発:HfO_2におけるカチオン欠陥と正孔との相互作用をモデル化するために、CONによるアプローチを拡張した。この手法は自由電荷キャリアの生成につながるカチオン欠陥からの正孔の熱的解放を記述することができる。そのような効果をモデル化できることは、光エレクトロニクスや光触媒への応用を伴うp型酸化物の性質を理解する上で重要である。本研究はNature Materialsへの投稿を準備中である。2.酸化物表面における電子-正孔捕獲:MgOの表面らせん転移による電子捕獲を、水素との相互作用を含めてモデル化してきた。これまでにない数の原子をフルに量子力学レベルで取り扱うために、埋め込みクラスタ法によるアプローチを用いた。これにより、転移が強力な表面電子トラップとして働くだけでなく、表面の水素が転移と出会うことによってプロトンと電子に解離することが示された。この予測はFritz-Haber研究所のH-J.Freund教授のグループによって最近行われた実験と一致する。3.酸化物界面における電子-正孔捕獲:正孔ドープされた条件でのHfO_2粒界の非平衡融解を分子動力学法によってシミュレーションした。このアプローチにより電気的なバイアス下でのHfO_2多結晶膜を突きぬける漏れ電流の効果をシミュレートできる。電流は温度上昇を引き起こし、酸素欠陥の拡散や、粒界の電気抵抗のスイッチングを引き起こす。これは不揮発性でエネルギー消費の少ない情報記憶デバイスへの応用に結びつく重要なテクノロジーである、酸化膜における抵抗スイッチングに対する直接的なモデルを与える。このように、本研究プロジェクトでは応用面と手法面の両方において多くの重要な結果を生み出すことに成功した。WPI-AIMRの職を辞するためプロジェクトを早期に終了することになったが、むこう数ヶ月のうちに本課題を謝辞に引いたインパクトの高い論文を多く出せると期待される。