- 著者
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マディナベイティア ヨネ (2011)
MADINABEITIA Ione (2010)
- 出版者
- 広島大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2010
人為改変や地球温暖化といった自然現象により外来種が侵入しつづけている。熱帯・亜熱帯水域に生息する魚類や、その寄生虫が日本にも生息すると言われている。特に、寄生性カイアシ類は養殖場内での感染拡大が容易であり宿主の成長率低下や大量死を引き起こす。それゆえ本研究の目的は、どの寄生虫が日本の養殖魚や天然魚において不都合な影響をもたらすか特定すると共に、熱帯・亜熱帯水域から日本の水域までの寄生虫の種多様性についても報告することにある。二重網法により、カイアシ類の発見は劇的に改善され、種数、数量共に、より正確な結果が得られるようになった。1500匹以上のカイアシ類が17種の魚類から二重網法により採取された。bomolochidsやphilichthyidsが最も多かった。Philichthyidsについていえば、沖縄近海において7種の魚類の側線から全部で6種のColobomatusが初めて報告された。Colobomatus colletteiの原記載は、熱帯水域であるニューギニア湾であり、亜熱帯水域である沖縄の海で初めて発見された。また、Procolobomatusがアジアで初めて発見された。以前の報告では東太平洋からだけであった。この研究でPhilichthyidsが亜科レベルにおいて宿主の系統発生についての情報をもたらした。Caligus sclerotinosusは、養殖場における幼魚の移動によってニュージーランドから日本へ侵入したと考えられていたが、最近、韓国の沿岸域からも養殖マダイへの寄生が発見された。また台湾の熱帯・亜熱帯水域のみで報告されていたMetacaligus latusが瀬戸内海で初めて発見された。日本でのC.sclerotinosusの発生は、人為改変によるものであり、M.latusは自然拡散によると考えられる。結論を述べると、5種のカイアシ類が国内の天然魚・養殖魚の両方に感染する外来種だと考えられる。本研究は低い宿主特異性を示す種のみでなく、高い種も宿主と共に熱帯・亜熱帯水域から日本への拡散が可能であることを示す。今後海水温上昇が続くようであれば、日本の水産に携わる者は将来侵入するであろう新たな外来種に対する準備を早急にすべきであろう。