著者
ミルハディ M. J. 小林 喜男
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.531-542, 1979-12-30
被引用文献数
1

1977年にH-726を供試して,土壌乾燥や萎凋がグレインソルガムの生育,窒素の吸収,収量その他の特性におよぼす影響を調査した. テンショメーターを用い4葉期から生育の全期間,土壌水分を夫々pF0〜1.5,0〜2.0,0〜2.5,0〜2.8に保つ処理をした. 6葉出葉期から4日,8日,12日と4日ずつ増加した9区の乾燥処理をし,その前後は無処理区と同様に毎日灌水した. また,9葉期,12葉期,出穂期,出穂後10日の各期に灌水を中止し,初期萎凋になった時,継続的萎凋になった時,更にその3日後,及び6日後に再び無処理区と同様に灌水して萎凋の処理をした. 得られた結果は次の通りである. 1. グレインソルガムは圃場容水量を下まわらない充分な灌水で不充分な灌水より穀実や茎葉の収量があがり,蛋白質も増加した. 2. 継続的萎凋かそれ以上の土壌乾燥は生育や穀実及び茎葉の収量,蛋白質含量を著しく減少させたが,穀実の澱粉含量には見るべき差がなかった. 3. 生育の各期によって土壌水分に対する感受性が異り,生殖生長期即ち出穂期から開花期登熟初期は危険な時期で充分な土壌水分が要求され,十分な灌漑が必要である. 従って実際の栽培では水管理をよくし,これ等の期間の土壌水分不足はさけねばならない. 4. 出穂期に水分不足になれば花柄の伸長が阻害され,登熟初期の水分不足では穂重,1穂粒数,1穂粒重,千粒重も減じたが,穂長に影響はなかった. 5. 萎凋中に伸長する諸器官の伸長は減少し,反対に再灌水後に伸長する諸器官の発達が著しく増大することは興味あることで,節間の場合に,より明瞭であった. 6. 伸長しなかった根と伸長した根の合計値は灌水量の多い区,6葉期に10日程乾燥処理をした区で無処理より大きかった. また有意差はなかったが生育の各期で軽度の萎凋処理によって伸長した根が増し総根数も増大した. これは特に9葉期の処理で明らかであった. 7. グレインソルガムが生育初期(6葉期)のおよそ10日間の乾燥で,萎凋する前に灌水したもの,そして更に生育が進んで9葉期や12葉期に初期萎凋を経過したものが無処理区より生育が盛んになり,収量が増大したことは興味深いことで,これはおそらく充分な水湿と通気のため根のよりよい伸長と分布をもたらせたためと考えられるが,更に今後の研究にまたねばならない.