著者
ムズラックル ハリト
出版者
日本笑い学会
雑誌
笑い学研究 (ISSN:21894132)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.71-82, 2016 (Released:2016-12-20)

本稿では、故・2代目桂枝雀の落語における劇的空間、そして枝雀の「高座」の面白みを題材に、落語と俳諧の類似点について論じる。私の関心は「高座」という文化的要素それ自体の意義を問うよりも、演者と観客が共同で作品を作り上げるという日本文化の「座」の感覚を実感し、体験することにある。 俳諧は落語を理解するためにモデルを設けるとしたものであり、系譜作り、または歴史化としてあるのではない。あくまでも、パフォーマンス面、遊戯的な共有の上での類似点を持っていることについて論じてみたい。両者が持っている、とりわけ「共同制作芸術」という魅力的な共通点に注目し、「演者=観客」といった劇的空間の面白みを通して、観客との関係を重視する落語への理解を深める。