- 著者
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野村 亮太
- 出版者
- 日本笑い学会
- 雑誌
- 笑い学研究
- 巻号頁・発行日
- no.20, pp.32-43, 2013-08-31
健やかに楽しく生きるための資源として活用しやすい落語の楽しさを説明する観点として没頭体験に着目し,落語没頭体験尺度を作成した。17歳から23歳の高校生・大学生75名(男性48名,女性27名)を対象に調査を行い,信頼性・妥当性を検討した。噺の世界に入り込む主観的な感覚と五感の作用および生理的反応が生じる頻度について尋ねる21項目で構成された本尺度は高い内的整合性を示した。また,この尺度はメディアを視聴する場合よりも対面状況においてより没頭体験が生じやすいことを測定できることから,一定の妥当性が示された。なお,尺度得点に性差や年齢差は見られなかった。これを基に作成された10項目で構成され短時間で実施できる短縮版尺度は本尺度と同様の信頼性・妥当性を示すとともに,本尺度をよく予測できた。これらの結果は,落語鑑賞時の楽しさにみられる個人差とこれが心身の健康に与える効果という観点から議論された。