著者
ムハンド ピーター J.
出版者
長崎大学熱帯医学研究所
雑誌
熱帯医学 Tropical medicine (ISSN:03855643)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.105-118, 1988-06-30

Trypanosoma brucei gambienseの血流型原虫(TGBSF)を培養するにあたって,適した侍養細胞(feeder cell)を用いると,原虫は細胞に付着あるいは細胞間隙に巣を形成して増殖し,培養液中でも増えてくる.原虫が細胞と接してそのような巣を形成できないと原虫増殖は維持できず,結果としてその細胞は侍養細胞として不適である.この現象が原虫も含めて細胞の表面構造に関連していると想定して,単糖類および侍養細胞として用いた新生仔マウス脳細胞に対する家兎抗血清のTBGSF増殖に対する影響を検討した. 9種類の単糖類α-D-(+)-グルコース, D-(+)-ガラクトース, D-(+)-マンノース, α-D-(+)-フコース, D-(-)-リボース, D-(+)-キシロース, D-(-)-アラビノース, N-アセチル-D-グルコミサンそしてN-アセチル-D-ガラクトサミンを種々の濃度に加えみたところマンノースのみ1.25mM以上の濃度でTGBSFの増殖を阻害した.しかしプロサイクリック型に対してマンノースの影響はなかった.又侍養細胞に対する家兎抗血清はTGBSFの培養を阻害しなかった.用いた糖でマンノース以外の糖でもTGBSFの増殖阻害が認められたが,それは100mM以上の濃度でないと現れなかった.以上,その作用機序は不明ながら,マンノースが特異的にTGBSFの増殖を阻害することを見出した.