著者
木村 昌紀 余語 真夫 大坊 郁夫 Kimura Masanori Yogo Masao Daibo Ikuo キムラ マサノリ ヨゴ マサオ ダイボウ イクオ
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科対人社会心理学研究室
雑誌
対人社会心理学研究 (ISSN:13462857)
巻号頁・発行日
no.7, pp.31-39, 2007-03

本研究では、他者の感情表出に対する感受性を測定する「情動伝染尺度(Doherty, 1997)」の改訂を行い、共感性や精神的健康との関連性を検討した。363名の大学生が質問紙に回答した。因子分析の結果から、"喜び伝染"、"悲しみ伝染"、"怒り伝染"、"愛情伝染"の4つの下位因子が抽出され、各因子の内的整合性および再検査法による信頼性が確認された。また、共分散構造分析の結果から、1因子モデルよりも4因子モデルのほうが、適合度が高かった。加えて、他者の感情表出に対する感受性は、認知的共感性よりも情緒的共感性と有意な関連を示していた。さらに、喜び伝染のようなポジティブ感情の感受性が高い人は精神的健康が良かった一方、悲しみ伝染や怒り伝染のようなネガティブ感情の感受性が高い人は精神的健康が悪かった。これらの結果から、特定の感情について伝染しやすい人が、別の感情についても伝染しやすいとは限らず、感情の種類によって精神的健康への影響が異なることが示唆された。情動伝染のメカニズムを考える場合、感情の種類によって独立したプロセスを仮定する必要がある。