著者
ヨハネス・ハルミ ウィルヘルム
出版者
秋田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は僻地・離島を含む日本沿岸社会において深刻な「高齢化」や「過疎化」と呼ばれている現象が自然界の資源利用へどのような影響を与えているかである。つまり、従来より地元住民による生業の基盤を成してきた海と陸、及びその中間にあるエコトーン(磯など)の自然資源利用が若手を始めとする住民不足とどのように関わっているかである。二年間にわたる本研究の構造は大きく(a)「情報収集」(b)「分析」(c)「まとめ」の三段階からなっており、研究は全体として計画どおりに実行できた。特に(a)「情報収集」の展開が予想外に豊富であった。その為、本年度計画していた(b)分析過程の基盤となる問題提起の視点と意識に影響をあたえた。この中、戦略的な面で二通りにそろえてみた。それは、(イ)情報収集を持続している中、特に歴史や社会と関わる地理学派による長期研究を可能にすると考えた山口弥一郎などの貴重な調査録を取り組み、(ロ)最近は成果を調査できる行政側の諸プロジェクトの観察に取り組んでみた。つまり、一例をあげると(ロ)はグリーンツーリズムや地域社会の再建であるが、その際は各地の自然や社会状況が異なるため、グランドプラン的な行政対応ができない結果となることである。(イ)に関しては、同じ東北地方とはいえども秋田からは交通機関のふべんと研究者は自動車免許書を所有していないために大変遠い地域であった三陸北方から金華山周辺の牡鹿半島まで75年ほど前に歩いて調査をした山口氏の実地を運転手をしてもらえる機会があったため短期間ながら調査してみた。天候など時期的に厳しい調査であったが、特に諸地域性や地元住民のアイデンティティーに注意を計った結果、上記の「社会状況」の違いが顕著になった。例えば、U集落の住民が隣のO町に対する偏見や噂などを毎日の会話などの話題にしていることや、集落外者にたいする意識を維持する無形制度を持っていることである。全体的に言い換えてみれば、「沿岸地域の過疎化と社会高齢化が水産資源利用に与える影響」は自然環境にみならず、特に社会面で個々の違いを見せているため、資源利用や社会変動への取り組みが異なることである。今後の取り組みは地元住民に対する注意深い事前調査が必要出ると確信している。