著者
ラジャブザーデ ハーシェム
出版者
大阪外国語大学
雑誌
大阪外国語大学論集 (ISSN:09166637)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.119-150, 2001-03-30

ペルシア語の諺は、ペルシア文学の宝庫であり、その訪問者は、悠久の歴史を持つイラン人の文化と思想に触れることになる。古代イランの思想とイスラーム文明という、イラン文化の二つの源泉から湧き出た諺を知ることなしに、今日のイラン人の思考法やイランの社会、言語、思想のより深い理解は得られないはずである。諺は、人に意図を伝える手段として非常に有用である。そのため、古来、文筆家や詩人は、作品中に多くの諺をちりばめている。私たちが現在、サアディーやモウラヴィーのような大詩人たちの作品中に見る諺の中には、当時既に広く知られていた諺をそのまま用いた場合もあった。だが、その一方で、彼らが編み出した機知に溢れた表現や、物語の終わりに加えられた結論・教訓を示す一文が、以後新たに諺として伝えられるということも少なくなかった。このようにして、時を経るに従い、ペルシア語には、想定可能なあらゆるテーマにぴたりと当てはまる諺が見出せるようになっていった。本稿では、そのようなテーマの一つとして、「女性」を取り上げた。女性の言動を様々な角度から捉えた諺には、他者、とくに男性の視点が反映されている場合も多<、これを考察することによって、イランという男性中心主義社会の中の女性の地位と、今も残存する伝統的な女性観を明らかにする一助となり得ると考えるからである。