- 著者
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ラブソン スティーブ
- 出版者
- 上智大学
- 雑誌
- アメリカ・カナダ研究 (ISSN:09148035)
- 巻号頁・発行日
- vol.9, pp.1-17, 1992-11-30
アメリカ人の多くは, 1945年8月14日の「対日戦勝記念日("Victory over Japan Day"=V-J Day)」と聞けば, 長く破壊的な戦争が終わったことへの安堵の気持ち, そして目標が達成されたことへの満足感を連想するだろう。大統領ハリー・S・トルーマンが1946年にその名前を単に「勝利の日(Victory Day)」と短くした。その後, いくつかの州がこの「勝利の日」を法的な祝日とすることを宣言し, その中には1948年に同様の宣言を出したロード・アイランド州も含まれている。しかしながら, 1975年までにはこれらの州のすべてがこの祝日を廃止してしまった。それでも, ロード。アイランドのみはその唯一の例外であった。ロード・アイランドでは, 「勝利の日」は未だに広く"V-J Day"と呼ばれており, それは新聞や"V-J Day"記念特売のための宣伝などにさえも使われている。ロード・アイランドに住む日本人, 日系アメリカ人らは, 祝日の名前が法制化されていること, 及び名前が"V-J Day"と短く呼びやすくなっていることによってこの古く不名誉な呼び方が引き続き使われていることが促されているのであり, それによって彼らが戦時中の攻撃や虐殺に関して謂のない辱めを受け, 更に日本人, 他のアジア人, アジア系アメリカ人に対する中傷, 暴力の元となっている, と主張している。そのような事件は実際には少数であるにせよ, ここ数年増加する傾向を見せている。おそらくは, 日米間貿易での緊張の高まり, さらにはそれがメディアのセンセーショナリズム, 両国の政治家が感情的な愛国論を打ち上げていることによって不必要に煽られていることがその一因であろう。この祝日法を改定し名前を変えようと試みた法案が四つ州議会に提出されたものの, 州政府に多大な影響力を持つ退役軍人組合からの執拗な圧力によってその通過は阻まれてしまった。第二次世界大戦中にはロード・アイランド出身者から多数の死傷者が出たため, 祝日の名前を変えることは軍人の犠牲を軽んじることになり, さらには, 「歴史の見直し」を主張している日本の右翼集団を助長させてしまっていると, 彼らは主張している。しかし, 多くの退役軍人は改定を支持している。そして, 反核団体, 在米日本人, アジア系アメリカ人, ロード・アイランド州議会黒人幹部会なども同様の態度をとっている。彼らは, 日本の政治家が数度にわたりアフリカ系アメリカ人に対して偏見に満ちた発言をしたことに対しては怒りを隠さないにせよ, その祝日の現在の名前は差別的であるということにおいては一致を見ているのである。