著者
田辺 幾之助 須田 雅一 冨宿 昭人 サンチェス プリシラ C. ルボー ジャン ミシェル
出版者
鹿児島大學農學部
雑誌
鹿児島大学農学部学術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
no.37, pp.p197-206, 1987-03
被引用文献数
1

細胞融合によって, アルコール発酵適温が, または生育温度上限がより高いこうぼを育種するため, その素材として, 焼酎こうぼ, フィリピンのタプイこうぼなどのプロトプラスト形成を検討した.プロトプラストの形成にはβ-mercaptoethanolで処理したのち, Zymolyase 20Tを作用させる方法で検討した.焼酎こうぼ, 清酒こうぼ, コンピエーニュ工科大学こうぼはすべてSaccharomyces cerevisiae, また, タプイこうぼは12株中5株がSacch.cerevisiaeで, これらはいずれもこの方法でプロトプラストをよく形成した.一方, タプイこうぼで生育温度上限がより高いTorulopsis sp.7はこの方法ではプロトプラストの形成はまったく認められなかった.このTorulopsis sp.7を細胞融合の際の遺伝子源として用いるために, 呼吸欠損変異株をacriflavin処理で得た.呼吸欠損変異株はそれぞれ呼吸欠損の程度に差があったが, 発酵力, 温度的性質については原株と差がなく, acriflavin処理では変異を受けなかった.Torulopsis sp.7の呼吸欠損変異株は, 呼吸欠損の程度とは関係なく, 前記のプロトプラスト調製法でいずれもプロトプラストの形成が容易であった.