著者
万田 正治 堤 知子 山本 彰治
出版者
鹿児島大學農學部
雑誌
鹿児島大学農学部学術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
no.34, pp.p75-82, 1984-03

日本ザーネン種(雌雄各3頭), 日本在来種(雄2頭, 雌3頭)の計11頭を用い, 脳波と眼球運動の測定により山羊の睡眠について検討を行った.1.1日の総睡眠時間は, 日本ザーネン種雄200.4分, 雌233.6分, 日本在来種雄89.9分, 雌111.2分となり, 日本ザーネン種の方が有意に多かった.このうち日本ザーネン種ではN-REM睡眠はREM睡眠の約2倍であったが, 日本在来種では両者間に差は認められなかった.1日における睡眠の出現頻度においてもN-REM, REM睡眠ともに日本ザーネン種の方が有意に多く, とくにN-REM睡眠で顕著であった.1睡眠当りの持続時間については, N-REM睡眠では日本ザーネン種の方が長い傾向が見られたが, REM睡眠ではすべての山羊で4〜5分とほぼ一定であった.したがって睡眠時間はおもにN-REM睡眠の出現頻度と持続時間に左右されるものと考えられる.2.1時間毎の平均睡眠時間を算出し, 睡眠の日内変動を検討したところ, 睡眠はどの時間帯にでも出現するが, 昼間よりも夜間に多い傾向が認められた.これはとくに日本ザーネン種で顕著であり, 昼間の2倍以上の睡眠を夜間に取った.3.環境変化が睡眠にどのような影響を及ぼすかを温度と照明時間について検討した結果, REM睡眠の出現頻度に多少の変化が見られたが, 1日の睡眠時間に有意な差は認められなかった.したがって, 温度や照明時間の変化は睡眠を阻害するまでには至らないものと推察される.
著者
張 日新 秋山 邦裕
出版者
鹿児島大學農學部
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
no.58, pp.49-56, 2008-03

外国人研修・技能実習制度は発展途上国への技能移転のための国際貢献の制度と位置づけられている。近年、外国人研修生・技能実習生が急増している。しかし、人権侵害、労働法令違反、失踪、中間搾取などの問題が10年以上も続いてきた。これらの問題に対して、経済産業省、厚生労働省、法務省などの機関を中心に制度のあり方が検討され、いくつかの提言が出されている。本稿では、各機関・団体からの報告等の主要な論点を比較し、制度の持つ課題や今後のあり方について検討した。
著者
服部 芳明 寺床 勝也 藤田 晋輔
出版者
鹿児島大學農學部
雑誌
鹿児島大学農学部学術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
no.50, pp.63-74, 2000-03

環境保全型農林水産業への転換が今日的意味において求められている。木材に関連する業者の環境配慮に関する動向をとらえるため, アンケート調査を行った。森林認証, 木材認証・ラベリングが木材および木材製品の環境保全型への転換において鍵となると思われたため, 本報では, これを中心にまとめた。アンケート調査は, 次の4業種を対象とした。(1)鹿児島県内の林家349名を対象に1998年12月に実施した。回答は92名から得た。回収率は26.4%であった。(2)鹿児島県下の製材業者と木材業者1,001者を対象に1999年2月に実施した。回答は209者から得た。回は20.9%であった。(3)鹿児島県内の工務店562社を対象に1999年3月に実施した。回答は114社から得た。回収率は20.3%であった。(4)鹿児島市内にある336事務所の建築設計士を対象にした。回答は35事務所から得た。回収率は10.4%であった。結果を要約すると以下の通りである。森林認証制度を知りたい(「詳しく知りたい」と「どちらかと言うと知りたい」の和)と答えたものは林家では88%にも達した。FSC(森林管理協議会)による森林認証制度に対する関心度をみると, 関心を持つものは, 林家では58%であった。さらに, FSCによる森林認証制度を「積極的に活用したい」と答えたものが10%, 「活用を検討したい」が53%に達した。このように林家の森林認証制度に対する関心はきわめて高かった。この関心の高さは, 製材業者と木材業者, 工務店, 建築設計士のいずれにおいても認められ, いずれの業種も50%以上が関心を示していた。木材認証・ラベリング制度に対する関心はさらに高く, 関心を持つとするものは, 林家では74%, 製材業者と木材業者では56%, 工務店では62%に及んだ。「日本においても木材認証・ラベリング制度への検討が必要か」という質問では, 林家では75%, 製材業者と木材業者では58%, 工務店では75%, 建築設計士では82%もの多数の者が, 検討が必要であると答えた。また, 「将来, 日本が「森林認証制度」を策定する際に, その認証基準として, 林家では, 「日本独自の基準を盛り込むことが大切だ」という回答が68%と多数派であったが, 一方, 建築設計士では「日本独自の基準を盛り込むこと」は37%, 「国際的な基準と調和とていることが大切だ」とする回答は57%で, 後者の割合が多かった。このことから, 生産者側と使用者側とは関心の持ち方が異なることが知れた。「将来, 認証された木材, 木材製品が諸外国から輸入されることになった時, 国産材が認証されていないと市場から閉め出されることがあると思いますか」という設問に対しては, 林家では41%が, 製材業者と木材業者では35%が, 工務店では42%が, 建築設計士では48%が「はい」と答えた。このように, 認証された木材は, その市場影響力が大きいと見られている。工務店に対して「木材認証・ラベリングのように, 建材に表示する環境ラベリングが必要か」と問うた結果, 75.2%が必要と答えた。木材に環境ラベリングが必要であるというよりはむしろ, 木材も含めた建材製品一般に対して環境ラベリングが必要であると考えているように受け止められた。
著者
田辺 幾之助 須田 雅一 冨宿 昭人 サンチェス プリシラ C. ルボー ジャン ミシェル
出版者
鹿児島大學農學部
雑誌
鹿児島大学農学部学術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
no.37, pp.p197-206, 1987-03
被引用文献数
1

細胞融合によって, アルコール発酵適温が, または生育温度上限がより高いこうぼを育種するため, その素材として, 焼酎こうぼ, フィリピンのタプイこうぼなどのプロトプラスト形成を検討した.プロトプラストの形成にはβ-mercaptoethanolで処理したのち, Zymolyase 20Tを作用させる方法で検討した.焼酎こうぼ, 清酒こうぼ, コンピエーニュ工科大学こうぼはすべてSaccharomyces cerevisiae, また, タプイこうぼは12株中5株がSacch.cerevisiaeで, これらはいずれもこの方法でプロトプラストをよく形成した.一方, タプイこうぼで生育温度上限がより高いTorulopsis sp.7はこの方法ではプロトプラストの形成はまったく認められなかった.このTorulopsis sp.7を細胞融合の際の遺伝子源として用いるために, 呼吸欠損変異株をacriflavin処理で得た.呼吸欠損変異株はそれぞれ呼吸欠損の程度に差があったが, 発酵力, 温度的性質については原株と差がなく, acriflavin処理では変異を受けなかった.Torulopsis sp.7の呼吸欠損変異株は, 呼吸欠損の程度とは関係なく, 前記のプロトプラスト調製法でいずれもプロトプラストの形成が容易であった.
著者
工藤 寿郎
出版者
鹿児島大學農學部
雑誌
鹿児島大学農学部学術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
no.41, pp.p113-118, 1991-03

イタリアにおける水稲の栽培は15世紀の後半にはじまり, 以来米の需要増加にともなって栽培面積が年々拡大してきたが, その94%がポー河の中流域に集中している.その理由は古くから本地域内で農業灌漑用の運河や水路が数多く造られ, セシア河東西両水利組合がこれらを統轄管理して, 豊富な用水を安定供給できる体制が確立されているからである.従来, 農家は労働配分と通水の時期などの関係から, 水稲栽培面積の40%を移植, 60%を直播によっていたが, 1960年代地域内のミラノとトリノにおける商工業の著しい発達にともなって大量の農業労働力がこれらに流出したため, 農家は田植や稲刈作業に雇入れていた農業労働者を確保することができなくなり, 省力な直播様式に全面的に移行した訳である.湛水直播による水稲の栽培様式は, トラクター・ブロードキャスター・コンバインという大型機械体系を中核としていることが明らかとなった.これにもとづく主要な栽培作業は, 4月上, 中旬に大型トラクター・4連プラウで20〜25cmの深さに耕起, ブロードキャスターで施肥, ロータベーターで砕土均平, 湛水して中型トラクター・レーベラーで代かき, ブロードキャスターで除草剤散布, 1晩水に浸した種籾を下旬にブロードキャスターで散播, 病虫害防除のための薬剤散布と追肥は通常おこなわない, 9月上旬落水, 9月中旬から10月上旬にコンバインで刈取り, テンパリング乾燥機にかけて籾の水分を13%に引下げ貯蔵するものである.トラクターの大型化, ブロードキャスターとコンパインの普及によって, ha当り稲作所要労働時間が1960年の移植742時間から1980年の直播50時間に, また1988年の35時間に大きく減少された.しかし, 1972年までの過渡期にあっては, 直播専用品種の開発や新しい栽培方法の普及が遅れていたため収量が10%程度低下し, その変動が大きくなっていた.その後次第に機械化に対応した技術が基盤整備の推進と相まって普及し, 収量が6.00t水準に上昇安定して直播栽培様式が定着した.この間に機械の導入をめぐって稲作農家間で激しい階層分化が起こり, 20ha以下の小規模農家の大半が離農した結果, 農家戸数は半減して1988年に7,761戸となり, 1戸当り栽培規模は25.66haに拡大した.そして, 残る小規模兼業農家は収穫作業をコンバインの賃作業に依存しているのである.本地域は相対的に地価が高く, 農地の売買は極めて少ないので, 規模拡大は通常賃貸借によっている.ミラノ近郊のロザーテでは普通小作期間は10年, 小作料はha当り225千リラと比較的安い.最近は短粒種よりも中, 長粒種の方が需要が大きく, 価格も高いので, 農家はこれに即応して後者の栽培面積を拡げている.この結果, 1986年〜88年には年1,113千tの米生産量のうち, 短粒種の比重は15%に縮小した.そして, この20年間に米の輸出量が約2倍に増え, そのうち56%をヨーロッパ経済共同体向けに出荷しているが, これらはすべて中, 長粒種である.米の最低保証価格は100kg当り52,847リラであるが, 時期により市場相場が変動するので, 上昇時に大規模農家は米を籾すり加工業者に販売しようとする.業者は米穀協会を通して玄米で輸出し, また国内では精白米で市販している.イタリア国内における米の消費量は年約400千tで, 国民1人当り6kgといわれるが, 稲作農家では1人13kg程度と見込まれる.したがって, 生産米のほとんど大部分は商品として販売されており, 自家用飯米を生産目標とするものではない.それゆえ, 米に対する生産意欲が極めて旺盛で, これが直播栽培様式の定着化を早めたということができる.
著者
岩下 亜季 田原口 智士 高瀬 公三
出版者
鹿児島大學農學部
雑誌
鹿児島大学農学部学術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
no.56, pp.1-7, 2006-03

西日本の動物園および水族館で飼育されているペンギン(合計144羽)から、2002年8月-2004年5月にかけて採取された糞324検体についてサルモネラの分離を試みた。その結果、2002年8月にA動物園由来の16検体中8検体(50%)からサルモネラが分離され、すべてSalmonella Senfenberg(SS)と同定された。また、2003年12月にC水族館由来の糞15検体中1検体(6.7%)からサルモネラ(04群、血清型不明)が分離された。市販の12薬剤に対する薬剤感受性試験の結果、分離SS株はクロラムフェニコールに対して耐性を獲得していると思われた。04群血清型不明株は耐性を獲得しているとは考えにくかった。SSの7株および04群血清型不明1株を用いて、侵入遺伝子invAの検索を行ったところ、全てinvAを保有していることがわかった。
著者
大前 加陽子 福留 紘二 遠城 道雄
出版者
鹿児島大學農學部
雑誌
鹿児島大学農学部学術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
no.53, pp.1-14, 2003-03

温室メロンの夏期、秋期、春期栽培において牛糞堆肥の施用が生育、収量、品質と培養土の理化学的性質に及ぼす影響について検討した。1.牛糞堆肥の窒素無機化特性は化学肥料に比べ緩効的で、全窒素量の6割程度が栽培期間中に無機化され作物に利用される形態となることが明らかになった。2.栽培土壌中の無機態窒素量、茎葉生体重、葉面積は3作とも栽培期間中終始化学区が堆肥区よりも大きかった。しかし、果実重については処理区間差は認められず、収量にも差がなかった。その理由として(1)堆肥の緩効的な肥効特性(2)堆肥施用による土壌物理性変化に伴った低く安定的な土壌水分含量(3)堆肥区の安定的なpHなどが考えられた。3.果実の品質については堆肥区のほうが糖度、ビタミンC含量が高く、品質の保存性が高い傾向がみられた。これらの原因は化学区に比べて、堆肥区の低窒素、低水分などに起因するものと推察された。
著者
高山 耕二 中西 良孝 朝 魯孟
出版者
鹿児島大學農學部
巻号頁・発行日
no.55, pp.31-36, 2005 (Released:2011-03-05)

ヌビアン種とトカラヤギにおける超音波検査法による早期妊娠診断と、胎齢ごとの胎子器官の発育と胎子胸腰部長(体幹)、頭長、心臓直径を測定した。超音波検査法は胎齢別に経直腸検査法と経腹部検査法を用いて交配から分娩まで行った。交配後23±2日で胎胞がみられ、胎子は胎胞観察後7±2日でみられた。眼窩は交配後6週間にみられた。心臓はそれぞれのヤギで交配後30、40並びに50日でみられ、心室は交配後4ヵ月ごろにみられた。胎子の胸腰部長、頭長、心臓の直径は胎齢の推移に従って増加した。交配後3ヵ月までの胎子頭長の増加、4ヵ月半の胎子胸腰部長の増加が明瞭であった。これらの結果から、ヤギに対する超音波検査法は早期妊娠診断を可能にし、さらに胎子発育のモニターにも有用と思われた。
著者
高山 耕二 魏 紅江 萬田 正治 中西 良孝
出版者
鹿児島大學農學部
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
no.57, pp.1-4, 2007-03

本研究は合鴨農法における家鴨雛の適正放飼日齢を明らかにする上での基礎的知見を得ることを目的とし、インディアンランナー種、中国系在来種およびマガモ系合鴨の初生雛を供試し、最大60分間の強制水浴下(20あるいは5℃)における水浴能力を水浴時間、体温、羽毛の浸潤程度を指標として、3種間で比較検討した。得られた結果は次のとおりである。1)家鴨3種の水浴時間は0日齢で最も長く、日齢の経過とともにいずれも短くなった。3、6、9日齢の水浴時間はマガモ系合鴨が他の2種に比べ有意に長かった(P<0.05)。家鴨3種の水浴時間に水温による影響は認められなかった。2)0日齢における水浴終了時の体温低下は、インディアンランナー種に比ベマガモ系合鴨と中国系在来種で有意に小さかった(P<0.05)。0-12日齢における水浴終了時の羽毛の浸潤程度には、3種間で有意差が認められなかった。以上の結果から、供試した家鴨3種の中ではマガモ系合鴨が最も高い水浴能力を有することが示された。
著者
徐 屹暉 岩元 泉
出版者
鹿児島大學農學部
雑誌
鹿児島大学農学部学術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
no.63, pp.1-12, 2013-03

近年,中国当局は頻発した食中毒や残留農薬などの問題を非常に重視し,環境の質と食品の安全の向上を重要な政策に位置づけ,全国で「無公害・緑色食品,有機食品」の推進政策を実施している。それに伴い,中国の有機農業の進展が加速され,特に,沿岸部及び内陸大都市部で有機農産物需要が高まりをみせている。とりわけ富裕層,及び健康関心層の有機農産物への需要が高まりつつあることで国内市場が成長し,それが現時点の有機ブームになっている。本研究では,中国有機農業の発展にともなう有機認証システムの構築についての整理し,有機認証機関の役割について明らかにする。とくに,中国においては二つの国家レベルの有機認証機関が設立されており,近年は国内向けの有機認証機関と輸出するための外国向けの有機認証機関が分かれており,認証対象についても各々明確に仕分けが行われ,それぞれの役割を果たしていると言われているが,その実態を明らかにする。