- 著者
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レティツィア グアリーニ
- 出版者
- お茶の水女子大学ジェンダー研究所
- 雑誌
- ジェンダー研究 = Journal of gender studies, Ochanomizu University (ISSN:13450638)
- 巻号頁・発行日
- no.22, pp.111-129, 2019
女同士の絆は、はかない関係と見なされることが多い。とりわけホモソーシャルな絆(非性的かつ、友愛のコードが適用される同性間の親密性)=男同士の関係という印象が強いため、女同士の絆が不可視のもの、不可能なものとされてきた。その結果、男性間の友情物語と比べて女性間の友情物語が圧倒的に少ない。日本現代文学において女同士の絆の可能性を探った作家として角田光代が挙げられる。角田の作品において母娘関係をはじめ、女同士の関係に焦点を当てたものが多い。『対岸の彼女』(2004)では、現在における小夜子と葵との関係と、葵の高校時代における友人魚ナナコ子との関係、二つの物語を通じて作者が女同士の友情の可能性を模索している。本稿では、(1) 少女同士、(2) ママ友同士、(3) 負け犬対勝ち犬、それぞれの関係を中心に男性ホモソーシャル体制によって支持されている制度による女性の絆の制限の表象を探求し、その絆の可能性について論考を試みる。投稿論文