著者
レメイン ジェラード・バスチアン
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

典型発達 (TD) の未就学児童 (3-7 歳) と同じ年代の自閉症スペクトラム(ASD)の子供について,共感を喚起する刺激の脳内処理を 2 つの実験で確認した。まず TD の未就学児童を対象とした脳磁図の計測において,手指の触覚刺激に対する神経応答が他者の足指が刺激される映像を見ているときと比べ手指を刺激されている映像を見る時のほうがより増強されることを示した。これは視覚情報が他者のものであるにも関わらず、自身の触覚刺激に対する神経応答に影響を与えたことを示唆する。次に我々は近赤外分光法を用い,TD と ASD の子供両方について通常の音声と比べてささやき声のほうが皮質の血流応答を増大させることを示した。この応答反応の増大は,より個人的な意思疎通における話者意図の理解に関わる処理を反映している可能性がある。両実験を通じて, TD と ASD の子供両方が他者の気持ちを理解する共感に関連した刺激に対して反応しうることを示した。さらなる研究が求められるが,ASD の子供のささやき声に対する皮質の感応性は医学的な応用のために利用できるかもしれない。