- 著者
-
一之瀬 貴
- 出版者
- 早稲田大学
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2007
【研究の目的】ファットローディング法は高脂肪を摂取して筋内に脂肪を貯蔵し、その脂肪を運動時のエネルギーとして有効利用する方法である。筋内への脂肪の貯蔵には筋のリポプロテインリパーゼが重要な役割を担っており、その活性は運動後に高まるが、糖質の摂取によって低下することが知られている。一方、スポーツの現揚では運動中に使われたグリコーゲンを速やかに回復することが重要なので、運動直後に糖質を摂取することは不可欠である。本研究では運動直後に糖質を摂取する条件の下、どのようなタイミングで高脂肪を摂取すれば運動時の脂質利用を効果的に高めることができるのかを検証した。【研究の方法】6名の若年成人男性を対象として、運動と食事を2日間統制した後、3日目に自転車エルゴメータを用いて運動試験を行い、疲労困憊までの運動時間と糖質・脂質の酸化量を評価した。食事統制は無作為な順序で、1週間以上間を空けて3回行った:1)運動直後に糖質を中心とした基本食のみを摂取する、2)運動直後に基本食と高脂肪食を同時に摂取する、および3)運動直後に基本食を摂取して、3時間後に高脂肪食を摂取する。運動後以外の食事は全て同じとした。【研究の成果】疲労困憊までの運動時間は基本食と比較して高脂肪食を摂取した場合に延長した。疲労困憊までの脂質酸化量は基本食より高脂肪食を摂取したときに高かったが、糖質酸化量は同じであった。したがって、高脂肪食摂取による運動時間の延長は脂質利用の増加による糖質利用の節約に起因したと推察される。一方、運動時の脂質酸化量は運動直後または運動3時間後に高脂肪食を摂取した揚合で同じであった。以上の結果から、運動後の食事では糖質だけでなく、高脂肪を積極的に摂取することの重要性が示唆された。また、運動後3時間以内の高脂肪摂取による脂質酸化量の増加は、糖質摂取の影響の変動に関係がないことが明らかになった。