著者
若狭 悠介 諸橋 一 坂本 義之 三浦 卓也 神 寛之 米内山 真之介 一戸 大地 袴田 健一
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.36, no.7, pp.1187-1191, 2016-11-30 (Released:2017-03-18)
参考文献数
28

上腸間膜静脈血栓症(superior mesenteric venous thrombosis:以下,SMVT)は腸間膜静脈の血流障害により,腸管のうっ血や肝機能障害をきたす比較的まれな疾患である。死亡率は0~23%とされており,初期対応が非常に重要とされる。症例は32歳女性。数日前からの嘔吐,発熱,腹痛を主訴に近医で抗生剤投与が行われていたが症状の改善を認めず,腹部CTで急性虫垂炎が疑われ当院へ救急搬送された。腹部CTで回結腸静脈から上腸間膜静脈にかけて血栓が認められ,急性虫垂炎に合併したSMVTと診断し,同日虫垂切除術を行った。術後は大きな合併症なく良好に経過し,速やかに抗凝固療法が開始され第8病日に退院された。虫垂炎にSMVTを合併した症例については,血栓形成の原因除去を目的とした虫垂切除術とSMVTの進展や波及を防ぐ抗凝固療法が重要であることが示唆された。
著者
橋爪 正 神田 大周 久保田 隼介 一戸 大地 横山 拓史 山田 恭吾 松浦 修
出版者
一般社団法人 日本外科感染症学会
雑誌
日本外科感染症学会雑誌 (ISSN:13495755)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.18-25, 2019-03-30 (Released:2019-07-13)
参考文献数
23

術後高血糖は大腸手術の手術部位感染(SSI)リスク因子である。1990~2009年の初回開腹腸切除 2,099例を対象として,全例に SSI予防バンドルを施行し,1990~1999年(前期)は血糖目標値200mg/dL,随時インスリン皮下注(SCI)法を行った。前期の糖尿病患者の創部 SSI率は17%と高かった。2000~2009年(後期)は目標血糖値を150mg/dLに変更し,一部の糖尿病と耐糖能異常に5%または7.5%糖濃度の維持輸液を投与し,術後 48時間まで持続インスリン静注(CII)法を行うきめ細かな血糖管理を前向きに実施した。CII法は SCI法に比べてすみやかに高血糖を改善し,血糖変動が少なく,術後 2~4時間で血糖値は安定した。著しい低血糖の発生もなかった。後期糖尿病患者の創部 SSI率は10%まで改善した(非糖尿病9.3%)。150mg/dLを目標とするきめ細かな血糖管理は大腸手術 SSI予防に有用と確認された。最近の SSIガイドラインは血糖目標値 150~200mg/dLを示しているが,今後も周術期血糖管理に関して詳細な検討が必要と思われる。