著者
丁 安平 小野 雅之
出版者
日本農業市場学会
雑誌
農業市場研究 (ISSN:1341934X)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.139-144, 2002-12-31

中国黒竜江省においては、日本と韓国のMA米輸入と日本からの栽培技術や精米技術の導入によってジャポニカ米の生産・輸出が増加している。さらに、WTO加盟によって米の輸出志向が強まろうとしている。そこで本稿では、中国最大の米生産・輸出地域である黒竜江省を対象に、米輸出体制が抱える問題を明らかにするとともに、近年における輸出体制の改革の展開方向について検討した。第1の問題は、中国の米生産・流通は、改革開放以降、段階的に規制が緩和されてきたが、米輸出については依然として中央政府の一元的管理のもとにおかれており、吉林省を除く各地方政府には輸出権が与えられていないことである。そのため、黒竜江省は中央政府の輸出機関へ米の供給という役割のみを与えられるにとどまっている。第2の問題は、中央政府の機関である国内供給部門や輸出部門と省政府の間の連携や、国内供給部門と輸出部門の間の連携が不十分であり、国内供給と輸出との統一的な管理・調整行われていないことである。その結果、省内の米生産の状況が輸出部門に適切に伝達されず、機動的な米輸出を困難にしている要因となっている。このような問題を解決するため、2001年に黒竜江省政府が主導して国内供給部門や輸出部門との連携を強化し、省政府が米の国内供給と輸出に関与できるようにした。さらに、省農業委員会の組織を改革し、米をはじめとする重要農産物の生産・輸出の調整機能を強化した。以上の改革によって、黒竜江省内の米生産・輸出に対する省政府の発言力が強まるとともに、日本向け米輸出が拡大することが考えられる。