著者
佐藤 裕二 古屋 純一 畑中 幸子 内田 淑喜 大澤 淡紅子 七田 俊晴
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.263-268, 2021-12-31 (Released:2022-01-28)
参考文献数
11

口腔機能低下症の診断のためには,口腔機能に関する7項目の検査を行う必要があるが,検査の内容が多彩であるためミスが生じやすい。そこで,口腔機能低下症の検査において起こしやすいミスと対策の例について報告する。 口腔衛生状態不良は舌苔付着度を評価するが,評価エリアに舌側縁は含めないことに注意が必要である。口腔乾燥は口腔粘膜湿潤度を評価するが,口腔水分計の先端にゆとりをもたせた状態でカバーを装着すること,また舌の位置を工夫して安定させることが重要である。咬合力低下はデンタルプレスケールを用いるが,フィルムの種類による3種の基準値の理解とフィルムの乾燥に留意する。舌口唇機能低下はオーラルディアドコキネシスによって評価するが,高齢者が理解しにくいため,自動計測器に音節を記したラベルの貼付が有効である。また,感染防止にも配慮した計測方法を用いたい。低舌圧は舌圧測定器により評価するが,プローブの傾きとバルーンの向きに注意が必要である。咀嚼機能はグルコース溶出法によって評価するため,素早い測定操作と患者への説明が欠かせない。また,嚥下機能は主観的評価であり,回答方法に関する事前の説明が重要である。 このように,口腔機能低下症の検査については起こりがちなミスがあるため,臨床上の工夫を行うことで,少しでも検査の信頼性の向上につなげることが重要である。
著者
佐藤 裕二 北川 昇 七田 俊晴 畑中 幸子 内田 淑喜
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.230-232, 2020-12-31 (Released:2021-01-28)
参考文献数
4

目的:2020年6月に,2019年6月(医療保険導入後1年2カ月)の社会医療診療行為別統計が公表されたので,これを前報の2018年6月の実施状況と比較することで,最新の口腔機能低下症の検査・管理の実態を明らかにすることを目的とした。 対象と方法:2019年6月および2020年6月に発表された社会医療診療行為別統計により,2018年6月(医療保険導入後2カ月)および2019年6月(医療保険導入後1年2カ月)の口腔機能低下症の検査・管理の実施状況を調査した。 結果:医療保険導入1年2カ月後には,咀嚼能力検査は前年の統計に比較して約5倍,舌圧検査は約2倍,口腔機能管理加算は約4倍となったが,咬合圧検査はほとんど変化がなかった。 考察:普及したとはいえ,初診患者の1%以下の検査実施率であり,これは,まだまだ普及の途上であるといえる。 結論:検査・管理は普及してきているものの,さらに普及させる必要性が示唆された。
著者
佐藤 裕二 七田 俊晴 古屋 純一 畑中 幸子 内田 淑喜 金原 大輔
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.101-104, 2021-09-30 (Released:2021-10-21)
参考文献数
6

目的:2021年6月に,2020年6月(医療保険導入後2年2カ月)の社会医療診療行為別統計が公表されたので,これを前報の実施状況と比較することで,最新の口腔機能低下症の検査・管理の実態を明らかにすることを目的とした。 対象と方法:2019年6月,2020年6月および2021年6月に発表された社会医療診療行為別統計により,医療保険導入後2カ月,1年2カ月,2年2カ月の口腔機能低下症の検査・管理の実施状況を調査した。 結果:「65歳以上の初診患者」は225万人(2019年),188万人(2020年),125万人(2021年)と減少していた。そのため,2019年から2020年にかけての検査・管理件数はわずかな増加(1.2倍)であったが,初診患者数に対する実施率は1.8倍になった。 考察:検査・管理件数は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響も考えられ微増(21.2%増)にとどまったが,普及は進みつつある。ただし,口腔機能低下症の有病率と比べると依然として実施率は少ない。 結論:口腔機能低下症の検査・管理は普及してきたが,さらなる普及に向けた努力が必要であることが示された。