著者
有田 真己 万行 里佳 岩井 浩一
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11118, (Released:2016-02-29)
参考文献数
25

【目的】施設および在宅での運動を想定した場合,それぞれ実施する自信の差を運動種目別に明らかにし,差の大きさを効果量により判定する。さらに,各運動種目を実施する自信と行動の予測因子である自己効力感(以下,SE)との関連について明らかにする。【対象】要支援・要介護者114 名を対象とした。【方法】施設および在宅での運動を想定した場合,各運動種目を実施する自信について5 件法で調査した。また,在宅運動SE 尺度(以下,HEBS)を用いて,SE の程度を得点化した。【結果】在宅を想定した場合における運動の自信は施設と比較し有意に低く,効果量は高値を示した。各運動種目すべてにおいても同じく有意に低い結果となった。運動種目別の自信の量とHEBS 得点は有意な正の相関を示した。【結語】受け入れやすさおよび自信といった心理指標を用いることで,より対象者に適した運動内容の作成へとつながることが示唆される。
著者
万行 里佳
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1569, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】内臓脂肪型肥満は,メタボリックシンドロームなどの発症リスクを高める要因となる。肥満を改善する方法として,運動や食事などの生活習慣の是正が有効であるが,自覚症状がほとんどないため,生活習慣改善のための行動の開始や継続が容易ではない。そこで,本研究は,腹部肥満者を対象として行動変容技法を用いた介入を実施し,生活習慣改善による肥満等への効果を検討した。【方法】対象者は,30歳以上,腹囲が男性85cm,女性90cm以上でメタボリックシンドロームではない者とした。参加者は9名(男性8名,女性1名,平均年齢42.6±9.4歳)である。研究期間は48週間とし,はじめの12週間は「強化介入」を実施,13-24週の12週間は,特に何も実施せず「経過観察」を行った。25-48週の24週間は「フォローアップ介入(以下,FU介入)」を実施した。介入内容は,はじめに「知識提供」として,生活習慣改善の目的や方法,効果に関する小冊子を配布した。次いで,1.生活習慣調査の結果を提示し,運動習慣や食事習慣の改善に関する目標行動を1-2項目設定させた。目標内容は実行できる自信が95%以上ある「自己効力感の高い」内容となるよう指導した。目標は4週間毎に見直しを行った。3.自己記録表に目標の達成度,体重,歩数,腹囲,コメントを毎日(腹囲のみ週1回)記載し,電子メールにて提出させた。4.研究者は自己記録表の内容をもとに行動への「賞賛」や各自の「行動パターンの長所や問題点への対処方法」について参加者自身に思考させることを意図した助言を返信した。自己記録表の提出と研究者からの返信の頻度は,強化介入期間は毎週,フォローアップ介入期間の前半は,2週間に1回,後半は4週間に1回とした。測定は開始時と12週間毎に計5回行った。測定項目は,国際標準化身体活動質問票より総身体活動量,食物摂取頻度調査より総エネルギー摂取量を算出した。血中脂質として総コレステロール,高比重リポタンパクコレステロール,中性脂肪を測定した。また,身体計測として腹囲および身長,体重よりBody Mass Index(以下,BMI)を算出した。統計処理は,5回の各測定値の変化についFriedman検定を行い,有意差のある場合は多重比較を行った。統計学的有意水準は危険率5%未満とした。【結果】平均腹囲は,開始時97.2±13.3cmよりFU介入終了時93.0±10.8cmと減少したが,有意な差はなかった。平均BMIは,開始時29.0±6.6kg/m2より,強化介入終了後28.0±6.1kg/m2となり,開始時に比べて強化介入終了後と経過観察終了後,有意に減少した(p<.05)。平均総コレステロール値は,開始時200.8±22.1mg/dLより強化介入終了後,191.7±21.8mg/dLと減少したが,強化介入終了後と比べて,経過観察終了後,FU介入終了後に増加した(p<.05)。高比重リポタンパクコレステロール,中性脂肪,総身体活動量,総エネルギー摂取量の値に変化はなかった。【考察】行動変容技法のうち,動機づけ面接(Miller WR & Rollnick S)では,目標とする行動に対する「重要性と自信」を高めることが行動を開始させ,継続するために重要であるとされている。本研究は,重要性を高めるために開始時に知識提供を行った。また,生活習慣改善のための目標行動の内容は,研究者が指定せずに,参加者の個々の自己効力感の高い目標内容を設定することを強調し,行動実施への自信を高めた。さらに,行動の継続と強化を目的として,自己記録表の返信において,問題への対処方法を検討させることや,行動への賞賛を行った。その結果,BMIや腹囲が減少し,肥満の改善効果がみられた。自覚症状が乏しい者への指導では,知識提供に加えて,行動実施への自信を高める介入が有用であることが示唆された。今後は,参加者数の増加やランダム化比較試験による検証が必要であると考える。【理学療法学研究としての意義】生活習慣病患者の増加に伴い,自覚症状が乏しい患者への効果的な運動指導の必要性が高まっており,発症予防分野への理学療法士の貢献においても意義のある知見であると考える。
著者
有田 真己 岩井 浩一 万行 里佳
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11477, (Released:2019-02-08)
参考文献数
27

【目的】在宅運動の実施者・非実施者における運動効果の実感の有無および自己効力感の差を明らかにし,運動効果の実感を認識する日常生活場面および身体部位を特定する。【方法】要支援・要介護者117 名を対象に質問紙調査を行った。調査項目は,属性,在宅運動実施状況,運動効果の実感の有無,在宅運動セルフ・エフィカシーとした。運動効果を実感する者に対しては,実感する日常生活場面および身体部位について聞き取った。【結果】運動効果の実感有りと回答した者は運動の実施者に多く,自己効力感の得点も有意に高かった。運動効果を実感する日常生活場面は,「歩く」,「立ち上がる」,「階段昇降」であり,実感する身体部位は,「下肢」,「腰」,「膝」であった。【結論】実感といった内在的報酬は,身近な日常生活の中で獲得されており,運動の継続に関与していることが示唆される。今後は,運動による効果を実感するタイミングについて明らかにする必要がある。