著者
永野 昌俊 鈴木 秀典 齋藤 文仁 坂井 敦 肥後 心平 三ケ原 靖規
出版者
日本医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

マウスを用いた行動実験系で、帝王切開によって生まれた仔マウスは自然分娩によって生まれた仔マウスと比較した場合に、社会性を含め様々な違いが確認された。行動実験のほとんどが仔の成長後に実施しているが、一部は、生後8日目という早期から確認されたものもある。つまり、帝王切開出産による生まれた仔への影響は生後の長きにわたる事が示唆された。そして、これらの影響は周産期におけるオキシトシンの単回投与で抑制できることが確認された。また、周産期にオキシトシン受容体のアンタゴニストを投与して自然分娩をさせると、生まれた仔マウスは帝王切開によって生まれた仔マウスに近い行動変化を引き起こすことも確認された。これらの研究の進行の手がかりとして大きく役立ったのは、同時進行している自閉症のモデルマウス(Nakatani et al., Cell, 2009)を用いた研究で、生後3週間に及ぶ選択的セロトニン再取り込み阻害薬のフルオキセチンの処理が、成長後の社会性行動を改善させることを見いだしたこと(Science Advances, e1603001, 2017)、及びその改善効果はセロトニン1A受容体アゴニストの投与によっても再現され、オキシトシン受容体のアンタゴニストとの同時投与でキャンセルされてしまうこと、セロトニン1A受容体アゴニスト投与はモデルマウスの血中オキシトシン濃度を上昇させることを見いだしたこと(Scientific Reports, 8:13675,2018)である。