著者
中川 智行 三井 亮司 谷 明生 河合 啓一
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.744-750, 2015-10-20 (Released:2016-10-20)
参考文献数
36
被引用文献数
1

「産業のビタミン」とも呼ばれる希土類元素(レアアース)は,さまざまなエレクトロニクス製品などの性能向上に必要不可欠な金属であることから,私たちの生活とかかわりが深い重要金属元素に数えられる.しかし,これまでレアアースが自然界において生態系や生物の生命活動にどのように関与するか,その生物学的意義はほとんど研究されていない.このようななか,近年,メタノールを唯一の炭素源として生育できるMethylobacterium属細菌がレアアースを要求する新規なメタノール代謝系をもつことが見いだされ,そのメタノール代謝の鍵酵素がレアアースを補因子とする新規なメタノール脱水素酵素(MDH)であることが明らかとなった.またレアアースを要求するMethylobacterium属細菌が自然界に普遍的に生息すること,さらにはMethylobacterium属細菌のみならず,根粒菌やメタン酸化細菌などからもレアアース依存的MDHの存在が報告されていることなど,レアアースを要求するC1代謝系は単なる一部のメチロトローフ細菌群に限った性質ではなく,広く自然界に分布する一般的かつ基盤的代謝系である可能性が示されている.本解説では,この新規なレアアース依存的なメタノール代謝系についてM. extorquens AM1株を中心に解説し,鍵酵素レアアース依存型MDHの機能と新規なメタノール代謝系の生物学的意義について説明する.
著者
谷 明生 中川 智行 三井 亮司 NURETTIN Sahin
出版者
岡山大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

植物に多く共生するMethylobacterium属細菌の系統分類に関しては四株について新種提唱を行った。生育促進に関わる植物ホルモンについて分析し、サイトカイニンが最も重要であることを示唆する結果を得た。メタノール脱水素酵素(MDH)の補酵素が気孔を開く活性を持っており、その作用機構として活性酸素の除去にあることを見いだしている。MDHのホモログの中に希土類元素を要求するものを見いだし、機能解析を行った。イネをモデルとして本属細菌の種レベルでの同定を行い、イネの種子に含まれる本属細菌の種は、イネの遺伝型よりも栽培条件に影響されていることを示唆する結果を得た。