著者
深尾 隆則
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2005

1. 屋外型飛行船システムの構築初年度購入した全長12mの屋外型飛行船にGPS,IMU,風速・風向センサを装着し、組み込み型の小型計算機などにより自律飛行船ロボットに必要なシステムの構築を行っているが、今年度は送受信機系の信頼性を高める改修を行った。2. 実地試験8月初旬から4週間を北海道大樹町の多目的航空公園で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の協力の下、実機実験を行った。今年度は特に、高度維持制御に関する実験を集中的に行い、旋回時や風が強い時に見られたピッチングの変動が抑えられ、また支持した高度への移動も可能になった。3. データ解析、シミュレータ構築空力特性に関する理論モデルの構築を行った。これは風洞試験なしで飛行船モデルを構築するためであり、将来の飛行船開発に役立つものである。また、JAXAの協力下で、実機実験により得たデータを用い、比較検討を行った。さらに、この理論モデルや風の理論モデルを導入した飛行船シミュレータの作成を行った。4. 情報収集システムの開発画像情報収集システムに関しては、ステレオカメラを回転させる回転型ステレオカメラを考案し、建造物などを高解像度に撮影できるシステムを開発した。収集された情報の多さなど、通常のステレオシステムよりも非常に有効な情報収集手段であることが明らかとなった。
著者
戸次 大介
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究の目的は、メタラムダ計算とモナドを用いて、意味・談話情報を統一的に記述することである。具体的な研究項目は、1) メタラムダ計算とモナドの基礎理論、2) モナドによる意味・談話情報の記述と経験的検証、の二つからなる。1) については、メタラムダ計算の型付き言語としての形式的性質(圏論的意味論、代入操作の健全性、αβη変換の健全性、等)を示し、2)については、メタラムダ計算においては「非決定性モナド」「大域変数モナド」「継続モナド」「慣習の含意のモナド」の四つのモナドを用いることによって、意味・談話の境界に位置する複数の言語現象を統一的に表現できることを示した。
著者
石原 康宏
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2017-04-01

化学物質の中には、胎児期に曝露すると成長後の行動異常を引き起こすものがあることが分かっている。着目すべきは、これら化学物質の多くがエピゲノムに影響し得ることである。また、脳内の免疫細胞であるミクログリアがスパインやシナプスの貪食を介して発達期の神経回路網の形成に関わることが明らかになりつつあり、ミクログリアと行動異常との関連が議論されている。これらの背景から、本研究では、『化学物質はミクログリアの遺伝子発現を長期的に変化させ、その結果ミクログリアが活性化し、異常な神経回路網が形成される』との仮説を検証する。本年度は試験物質として、まず、胎児期の曝露によりヒトおよび実験動物(マウス、ラット)で成長後の行動異常が確認されているバルプロ酸を使用する。妊娠マウスをバルプロ酸に曝露させたところ、成長後の仔の空間認知機能と社会相互作用が低下し、反復行動を示した。バルプロ酸の胎児期曝露は、発達期のミクログリアを過剰に活性化し、シナプス数を減少させた。このシナプス数の減少は一過的であり、成長後のシナプス数は、コントロール群とバルプロ酸曝露群でほぼ同数であった。以上の結果より、胎児期のバルプロ酸曝露は発達期のミクログリアを活性化することが明らかとなり、また、発達期に活性化したミクログリアは、発達期におけるシナプスの減少や成長後の行動異常に関与する可能性がある。来年度以降、ミクログリア活性とシナプス減少、行動異常との相関を明らかにし、ミクログリア活性化メカニズムを追及する。
著者
城田 幸一郎
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2002

近年、キラルネマチック液晶のフォトニックバンド端における群速度異常を利用したレーザー発振が盛んに研究されているが、液晶フォトニックレーザーの安定性に関するデータはほとんど報告されいない。最終年度である平成16年度は、この点を明らかにし、実用性について検討した。用いた液晶は、キラルネマチック液晶にキラル化合物を適量混合し、ピッチをレーザー色素の発光帯に調整したものである。色素には、一般的なレーザー色素であるCoumarin、DCM、Pyrrometheneなどを用いた。それぞれの色素に合わせてピッチを調整した液晶に色素を約0.5%ドープし、25μm厚の水平配向セルに注入して試料とした。光ポンピングのための光源として、Ti:Sapphire増幅器(繰り返し:1kHz、パルス幅:〜125fs)により励起したOPAを使用した。励起波長は、Coumarinに対しては、370nm、DCM、Pyrrometheneに対しては530nmである。全てのサンプルは長波長側のバンド端で発振し、発振波長は、Coumarin:476nm、DCM:610nm、Pyromethene:579nmであった。紫外光励起(3710nm)であるCoumarinは、励起パルス数が10^4 shots程度で発振停止した。それに対して、530nm励起であるDCM、Pyrometheneは10^4 shots程度では全く変化がなかった。さらに、試料を最適化することによって、発振閾値を180nJまで低下させると、10^7 shotsでも安定に発振する試料を得ることができ、この時のQ値は5000を超えていた。この耐久性は固体色素レーザーと比較しても遜色のない値であり、液晶フォトニックレーザーは用途によっては十分に実用的な特性を有していることを確認した。
著者
若山 清香
出版者
山梨大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2009-04-01

本研究は絶滅動物の凍結死体細胞からクローンをよみがえらせる手法を開発することが目標である。そこで核移植技術を中心に、絶滅動物を復活させるために解決しなければならない問題を想定しマウスを用いて実験を行った。本研究費助成期間内に新たな染色体移植の方法、死滅した動物からの細胞の採取法、ならびに半永久的にクローン動物を継続維持できることなどを証明した。
著者
大村 一史
出版者
山形大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2009

本研究では生理指標(事象関連電位)と行動指標(心理行動実験)の組合せによって測定される実行機能を ADHDの中間表現型に据えて、ADHDに関連するパーソナリティ特性や遺伝子多型により実行機能(課題成績および脳活動)がどのように影響を受けるのかを検討し、心理-脳神経プロファイルに基づいたADHDアセスメントの基礎確立を試みた。中間表現型としての課題遂行中の脳活動は、特に自己制御に関連する衝動性傾向に強く影響を受けるものの、その影響の程度は一定ではなく、実行機能の個人差には、定型発達と非定型発達を分ける分水嶺が存在する可能性が示唆された。
著者
ARNER Erik CARNINCI Piero FORREST Alistair SAXENA Alka FAGIOLINI Michela
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2011

レット症候群のマウスモデルについてChIP 配列決定を行い、野生型(WT)とMecp2 欠損(KO)マウスの視覚野におけるMecp2 とFoxg1 の標的を特定。キャップによる遺伝子発現解析(CAGE)でKO の標的の発現レベルを評価した。WT とKO で発現の異なる遺伝子は主に発生後期に見られ、その多くは呼吸鎖等のミトコンドリア・プロセスに関連しており、レット症候群におけるミトコンドリアの関与を示唆している。
著者
水野 一枝
出版者
東北福祉大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2006

季節による睡眠温熱環境の変化が、幼児と母親の睡眠に及ぼす影響を検討するため、春、夏、秋、冬に実態調査と実験を行った。実態調査では、他の季節よりも夏の高温多湿環境が幼児と母親の睡眠を妨げていた。実験では、夏の高温多湿環境は幼児にのみ影響が見られ、他の季節よりも睡眠時間が短く、睡眠中の胸の皮膚の温度が高かった。実態調査、実験ともに高温多湿環境が幼児の睡眠に及ぼす影響が母親よりも大きい可能性が示唆された。
著者
池谷 裕二
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2010

脳回路の自己書き換え性を追求する上で、ニューロン同士のつくるシナプスに着目をしながら実験を進めて行ったところ、偶然にもアストロサイトが神経細胞の活動性に大きな影響をあたえることを見出した。アストロサイトはグリア細胞の一種であり、近年の研究では、脳の情報処理に多様な影響をもたらしうる動的な細胞であることはすでに報告されてはいる。しかし、多数のアストロサイトからなるアストロサイト・ネットワークがどのような挙動を示すかということについては未だ不明な点が多い。そこで、本研究では、急性海馬スライス標本における、アストロサイト・ネットワークの自発的な時空間活動パターンを、大規模カルシウムイメージング法によって記録した。その結果、隣接したアストロサイトどうしは、同期したカルシウム活動を示しやすく、ネットワーク全体として、局所的かつ動的な同期細胞集団を形成していることが見出された(本研究では、この活動を「アストロサイト・アイランド」と命名する)。薬理学的検討の結果、このネットワーク活動には、代謝型グルタミン酸受容体の活性化が関与し、神経活動とは独立に生じうることが明らかになった。また、ケージド・カルシウム化合物を用いて数個のアストロサイトを光刺激すると、周辺のニューロンにおいて、数mVの静止膜電位の脱分極と、自発的なシナプス入力頻度の増加が観察された。本結果は、アストロサイト・ネットワークの活動パターンを、従来にないほど大規模かつ詳細に記述するものであり、アストロサイト-ニューロンコミュニケーションを考察する上で重要な知見であると考えている。
著者
高瀬 克範
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

放射性炭素年代測定により,オホーツク海北岸ではトカレフ文化の土器が後3~9世紀,古コリャーク文化の土器が9~13世紀に位置づけられる。カムチャツカ半島西海岸では8世紀に土器が出現しはじめ,少なくとも13世紀まで製作が継続する。東海岸では11~13世紀に縄の圧痕をもつ土器が出現し,13~17世紀前半には貝殻文や刺突文をもつ土器が使用される。千島アイヌの成立とも関係の深いカムチャツカ南部の内耳土器は,15世紀後半~17世紀前半の古い段階と,17世紀後半~19世紀の新しい段階に大きく区分することができる。
著者
川脇 沙織(田中沙織) 大竹 文雄 成本 迅 山田 克宣
出版者
株式会社国際電気通信基礎技術研究所
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

満足度・幸福度が生物学的指標で記述できるかを検証した。経済的な満足度を測定する実験課題の作成および脳活動データ、経済学・社会・生物学的属性データを収集し、経済学・社会・生物学的属性と満足度に関連する脳活動との関係を明らかにした。頭頂皮質と線条体が主観的効用の表現にかかわり、また島皮質と背外側前頭前野が社会的効用にかかわりかつ性別という個人属性によってその活動が異なることを明らかにした。これらの幸福度に関わる脳部位の具体的な機能の検証を行うためにfMRIによるニューロフィードバック実験を検討し、主観的効用に関わる線条体の活動の変化とそれに伴う意思決定行動の変化を示唆する予備的な結果を得た。
著者
牧 輝弥
出版者
金沢大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2010

黄砂とともに風送される微生物群(黄砂バイオエアロゾル)を、黄砂発生地(タクラマカン砂漠)および飛来地(珠洲、立山等)の高度1000m-3000mで採取した。分離培養法および遺伝学的分析手法を駆使して、黄砂バイオエアロゾルに優占する種を突き止め、優占種が飛来地に沈着するとともに、ヒト健康影響および生態系の動態に関わっている可能性を明からにした。ただし、優占種以外の微生物種(非優占種)には、数百種が含まれることが分かり、その生態学的および生理学的特徴は推測に留まる。
著者
有賀 健高
出版者
石川県立大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

福島県での生産量が多い農林水産物及び水の計10品目に関して、日本全国の約8700人の消費者を対象にアンケートを実施し、福島第一原子力発電所事故後の風評被害の実態について探った。アンケートデータを分析した結果、放射線に関する知識がなく、原発から遠方に住むため普段原発近辺の食品をあまり目にしない消費者ほど原発近辺の食品を買うのを避ける傾向があり、こういった消費者は風評に影響されやすい可能性が示唆された。一方、放射線の危険性についての知識があり、風評ではなく自分の判断に基づいて購買を回避している消費者の場合は、風評ではなく実害もあるという考えから購買を回避している面もあることが明らかとなった。
著者
若山 照彦
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2003

卵子及び精子の凍結保存には定期的な液体窒素の補充が不可欠であり、長期間安全に維持するためには膨大な経費が必要である。そこで我々は精子および卵子の簡便な室温(非凍結)保存法の開発を試みた。従来の凍結保存に使われている試薬(グリセロールなど)は非凍結保存では毒性を示し、保存後の精子から産子を作ることはできなかった。しかし我々は高濃度のNaClを保存液に加えると精子の保存性が促進されることを発見した。この「塩漬け」方法では、保存中の精子の先体部が破けるなどのダメージが生じ、すべての精子が保存直後に死滅してしまうが、顕微受精技術によってそれらの精子を卵子内へ注入することで室温では10日間、4℃では2ヶ月間保存しても高率に産子へ発育させることが可能になった(Thaun et al., 2005)。これは従来の記録(室温で3日、4℃で1週間)を大幅に塗り替えている。以前我々は精子の凍結乾燥法を開発したが、今回の方法は高価な凍結乾燥機を必要とせず、より簡便な方法である。一方我々はこの方法が卵子にも効果があるかどうか検討してみた。その結果室温で24時間保存した卵子から顕微受精によって産子を作出することに世界で始めて成功した(Wakayama et al., 2004)。これまで卵子の室温保存は数時間が限度とされていたことから、本方法は精子だけでなく卵子においても有効であることが示されている。これらの研究から生殖細胞の保存にはDNAにダメージがなければ、細胞の生き死には重要ではないことが明らかとなった。また我々は生殖細胞を持たない不妊マウスからでも、体細胞核移植技術などを利用して子孫を作出する方法も開発中である(Wakayama et al., 2005)。
著者
梶本 裕之
出版者
電気通信大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2009

本研究は情動を引き起こす触覚体験の単位要素の同定および情動を引き起こす触覚体験に必要な触覚ディスプレイの設計論構築を行った.応用事例として,音響スピーカを用いた触覚提示装置,鉛筆削りを模した触覚提示装置,笑い増幅器,音響コンテンツに合わせた耳触覚,歯磨き振動変調による心地よさ増幅,立毛による驚き感覚の増幅,擬似心拍の提示による親近感の増幅を行い,さらに触聴覚間の和音の存在を明らかにした
著者
林嵜 和彦
出版者
福岡教育大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、海外におけるコミュニティ・スクール(以下CS)の制度・実践・諸研究を国際比較の観点から分析し紹介した。分析対象は、英国の拡張学校・拡張サービス、スコットランドの統合CS、合衆国のフルサービスCS、チェコとボスニアのCS、韓国のCSである。日本のCSとはことなり、これらのCSはそのいずれにおいても貧困削減やコミュニティ開発をつうじた学力の底上げをその目的としており、本研究では英国と米国を中心に、保護者支援や子どもの生活支援などの多様なとりくみを事例研究としてあきらかにした。
著者
荒牧 英治
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2008

電子カルテが急速に普及しつつある現在,電子カルテ文章からの情報抽出技術が待ち望まれている.しかし,カルテ文章は自然言語で記述されるため,現状では扱いが困難である.本プロジェクトでは,カルテに特化した情報抽出システムの開発を目指す.また,同時に研究利用可能な模擬カルテデータの構築も行い,研究材料として利用可能にする.
著者
高田 礼人
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2004

これまでに、エボラウイルスなどの新興感染症は世界の限られた地域でしか認められていないが、昨今の急激な国際化による人の移動および動植物の輸出入に伴い、それらの疾病の原因病原体が他国に拡散する可能性が高まっている。さらに近年、エボラウイルスのような致死率の高い出血熱ウイルスがバイオテロリズムの手段として使用される危険性が高まっており、対策を講じる必要がある。しかし、ウイルス性出血熱に対する効果的な医療手段はほとんどなく、予防・治療法を開発する事が急務となってきた。これまでに申請者は、エボラウイルスZaire株の表面糖蛋白質(GP)分子はウイルスの感染性を中和する抗体および増強する抗体の両方の標的である事を証明した。そこで、エボラウイルスの病原性の強さと感染増強抗体との関わりを調べるために、病原性の非常に強いZaireウイルスと病原性の比較的弱いRestonウイルスの間で、感染増強抗体誘導能を比較した。ZaireウイルスとRestonウイルスGPに対するマウスの抗血清をそれぞれ作成し、血清中の感染増強活性および中和活性を調べたところ、中和活性には殆ど差が無かったのに対して、感染増強活性はZaireウイルスの血清の方が優位に高かった。これは、感染増強抗体が結合できる抗原決定基の種類と数が両ウイルスの間で異なることを示している。また、この感染増強活性は主に血清中のIgG2a抗体によるものであることが示唆された。以上の成績より、エボラウイルスのGP分子そのものの感染増強抗体誘導能がウイルスの病原性と関連があることが示唆された。(注)実際のエボラウイルスを用いた実験は、Heinz Feldmann博士の協力でカナダの国立研究施設Canadian Science Centre for Human and Animal Healthで行った。
著者
大久保 智哉
出版者
独立行政法人大学入試センター
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では,大学入試センター試験などの大規模試験において新しい試験運用方式を検討するために,タブレット端末と統計理論を利用したテスト・システムの実験的運用がおこなわれた.本研究の成果として,情報端末を用いることで広がる新たな出題形式について成果を得た.さらには,試験問題を作成し問題データベースを構築した上で,実際にタブレット端末を用いて試験実施がおこなわれた.タブレット端末を試験用に管理するためのシステムについても検討が重ねられ,大規模試験における情報端末の効率的運用のために多くの知見が得られた.
著者
松岡 良樹
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究の目的は、銀河系外からやって来て可視光波長帯で観測される全ての光の総和である「可視光銀河系外背景放射」(Cosmic Optical Background; COB) の世界初検出である。当該年度にはまず、本研究期間中の平成23年度に達成した「惑星探査機パイオニア10/11号のデータによるCOB検出」についてさらに検討と議論を進め、国際学会、欧米学術誌などにおいて精力的に成果の発表を行った。また、銀河間空間に浮かぶ暗黒星雲の巨大版とも言うべき「暗黒銀河」HI 1225+01を対象とし、ニュージーランドのMOA-II 1.8m望遠鏡を用いて観測したデータの解析を行った。その結果、残念ながらこの暗黒銀河によるCOB遮蔽効果の検出には至らなかった。その原因と改善の方策を探るため、HI 1225+01の性質を詳細に探るフォローアップ研究を行った。MOA-IIで観測した可視光Rバンド画像の他に、Sloan Digital Sky Surveyの可視光5バンド、UKIRT Infrared Deep Sky Survey の近赤外線4バンド、Spitzer IRACおよびMIPSの赤外線7バンドの測光データをアーカイブから取得し、銀河モデルが予測するスペクトルモデルとの比較を行ったところ、HI 1225+01は非常に若くかつ熱いダスト成分を持つ銀河であり、blue compact dwarf galaxyと呼ばれる種族に良く似た性質を持つことが解明された。COB遮蔽が検出されなかったのは、おそらく可視光で十分な減光を起こすだけのダストがこの銀河に不足していたためと考えられる。この結果について欧米学術誌上で発表を行った。さらにCOBに寄与する個々の天体構成について調査を進めるべく、岡山観測所188cm望遠鏡の近赤外線撮像分光装置ISLEを用いて観測キャンペーンを行い、多数の活動銀河核のスペクトルを取得した。解析作業には予想外の時間がかかり、このデータについては現在も鋭意解析を行っているところである。