著者
栗原 達夫 江崎 信芳 三原 久明
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

1.Burkholderia sp.FA1由来フルオロ酢酸デハロゲナーゼはフルオロ酢酸の加水分解的脱フッ素反応を触媒しグリコール酸をあたえる。本酵素反応ではD104の側鎖カルボキシル基が基質のα-炭素を求核攻撃し、フッ化物イオンが脱離するとともに、酵素と基質がエステル結合した中間体が生成する。エステル中間体のD104のカルボキシル基の炭素原子を、H271によって活性化された水分子が求核攻撃して、グリコール酸が遊離するとともにD104が再生する。野生型酵素、D104N変異型酵素とフルオロ酢酸の複合体(Michaelis複合体)、H271Aとクロロ酢酸の複合体(エステル中間体)のX線結晶構造解析により、この反応スキームの妥当性が示された。基質カルボキシル基は、H149、W150、Y212、R105、R108によって認識され、フッ素原子はR108に結合していた。W150F変異型酵素では、クロロ酢酸に対する活性は野生型酵素と同等であるのに対して、フルオロ酢酸に対する活性は完全に消失した。W150はフルオロ酢酸の脱フッ素に特異的に必要とされる残基であることが示された。2.1,1,1-トリクロロ-2,2,2-トリフルオロエタン(Freon113a)を電子受容体とした集積培養によりSulfurospirillum属の嫌気性細菌を得た。テトラクロロエチレンを電子受容体とした集積培養により、16S rRNAの配列がuncultured bacteriumの16S rRNAの配列と98%の相同性を示す嫌気性細菌を得た。3.2-クロロアクリル酸資化性菌Burkholderia sp.WS由来の2-ハロアクリル酸レダクターゼとNADPH再生系として機能するグルコースデヒドロゲナーゼを共発現する組換え大腸菌を作製した。この組み換え大腸菌を用い、2-クロロアクリル酸を基質として、除草剤原料として有用な(S)-2-クロロプロピオン酸の生産を行った。従来法(光学分割法)を上回る収率で生成物を得ることに成功した。