著者
三原 岳
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.53-62, 2017-11-10 (Released:2019-11-11)
参考文献数
12

日本の医療保険制度は被用者保険(健康保険組合,協会けんぽ,共済組合),地域保険(市町村国民健康保険,後期高齢者医療制度)に分立しており,被用者保険と市町村国保の間で保険料格差が大きい。これは会社を退職後に被用者保険を脱退した高齢者が市町村国民健康保険に流入しているためである。さらに,市町村国保は被用者保険から漏れる非正規雇用の受け皿にもなっており,その財政は恒常的な赤字が続いている。 保険料賦課の仕組みで見ると,被用者保険は所得に応じた応能負担だが,地域保険は応能負担のほか,利益に応じた応益負担も組み合わせており,市町村国保では低所得者対策が課題となっている。一方,財政が豊かな健保組合も高齢者医療費に関する財政調整で財政が悪化している。こうした論点を社会保険方式の原則に沿って検討するとともに,地域単位での一元化など制度改革の方向性を検討する。