著者
奥谷 禎一 三方 彰一
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.100-112, 1958-06-01
被引用文献数
1

本報告は1955∼1956年に篠山地方において調査研究した,サクラを加害するヒラタハバチとサクラヒラタハバチの生活史である。<br>ヒラタハバチ;1)篠山では4月中旬から5月上旬にかけ成虫が出現する。生活期間は,成虫が1週間(雄)から3週間(雌),卵が約11日,幼虫が約22日,前蛹が約10か月,蛹が約17日である。2)産卵は葉裏の葉脈間に卵群として8卵内外が産まれる。3)幼虫は5令を経る。幼虫は吐糸によって葉を巻いて巣をつくる。造巣は協同して行われ,1巣内に数頭が群棲する。4)幼虫の食草はソメイヨシノおよびヤマザクラである。5)天敵としては5種のクモを発見した。<br>サクラヒラタハバチ;1)成虫の出現期は前種よりわずかに遅い。生活期間は,成虫が約9日(雄)から26日(雌),卵が約14日,幼虫が約25日,前蛹が約10か月,蛹が約14日である。2)卵は25粒内外の卵塊として葉裏の中肋上に産下される。3)幼虫は雄6令,雌7令で,吐糸によって天幕状の巣をつくり,群棲する。4)幼虫の食草はソメイヨシノ,ヤマザクラおよびナナカマドであるが,イヌザクラ,モモ,ウラジロノキでも飼育が可能である。5)天敵としては3種のクモとアマガエルを発見した。