著者
中内 恵美 鷲尾 健 三木 康子 正木 太朗 錦織 千佳子
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.15, no.6, pp.470-475, 2016

50歳代,男性。糖尿病性腎症による腎不全にて10年来血液透析を施行されていた。2015年春頃より左第2,3指,右第1,4趾に壊死の付着した潰瘍が出現し,悪化したため前医より当科に紹介受診となり,同年6月に精査加療目的に入院した。単純X線検査などからカルシフィラキシスを疑い,Ca・P 値の内科的調整を行った上で局所のデブリドマンを行ったところ指趾潰瘍が改善したため同年8月に退院し外来加療を継続した。しかし,同年冬頃から再度右第4趾の壊死の悪化,および第3趾潰瘍が新生したため2016年初頭に再入院となった。入院時,足趾の壊死に加えて両下腿伸側にそう痒性の角化を伴った粟粒大から大豆大までの紅色丘疹ないし小結節が多発していた。右第3趾からの生検による病理組織学的所見からカルシフィラキシスと診断した。また両下腿伸側の結節からは変性した弾性線維の経表皮的排出像があり,長年の糖尿病や透析に伴う acquired perforating dermatosis と考えた。カルシフィラキシスの治療に対してチオ硫酸ナトリウムの点滴静注を行ったところ,両下腿の角化性局面も平坦化して改善を認めた。チオ硫酸ナトリウムは組織に沈着している不溶物を可溶化し,さらに炎症を抑制することで acquired perforating dermatosis をも改善させたと考えた。(皮膚の科学,15: 470-475, 2016)