著者
正木 太朗
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.127, no.13, pp.2785-2789, 2017-12-20 (Released:2017-12-20)
参考文献数
16

顔面や手背などの日光曝露部に限局した皮疹を認めた場合,まず光線過敏症が疑われる.降圧薬などの薬剤を内服していないか,発症時期や家族歴などを問診することにより種々の疾患が鑑別される.病院における検査で非常に大切なのが,UVA,UVBや可視光による光線テストであり,遺伝子検査を含めた血液検査を参考にしながら診断につなげていく.治療としては遮光が大切であるが,皮膚科医が積極的に病態の作用波長を探していくことが,誤った遮光指導や,患者本人による過度な遮光を防ぎ,患者のQOL低下を防ぐことにつながる.
著者
原田 晋 松永 亜紀子 宮地 里江子 正木 太朗 森山 達哉
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.1515-1521, 2007-12-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
20

【目的】スパイスアレルギーは特に北欧諸国からは多数の報告が認められるが,本邦での報告は稀である.今回,当科で経験した2症例に対して諸検査を施行し,本症の発症機序に関する考察を加えた.【方法と対象】臨床経過からセリ科スパイスアレルギーと考えられた2症例に対して,花粉類・食物類の特異的IgEの測定,スパイス類・セリ科野菜類のプリックテスト・Immunoblotを施行した.但し,症例1 32歳男性では花粉症の既往はなく,症例2 46歳女性は春夏秋を通して花粉症症状を有していた.【結果】症例1では花粉類の特異的IgEは弱陽性のみ.Immunoblotは10〜12kDaおよび60kDaの部位で陽性.症例2では多数の花粉類の特異的IgEが陽性.Immunoblotは14kDaおよび60kDaの部位で陽性.プリックテストは2症例共にセリ科のスパイス類で強陽性を示し,セリ科のスパイスアレルギーと診断した.【結論】以上の結果より,症例1はスパイス自体の感作によるクラス1アレルギーを,症例2は花粉類との交叉反応により発症したクラス2アレルギーを疑った.本症には,このように複数の発症機序が存在するのではないかと推測される.本邦においても,今後スパイスアレルギーの発症が増加する可能性も考えられ,注目すべきアレルゲンである.
著者
山田 早紀 松原 康策 千貫 祐子 堀 雅之 正木 太朗
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.68, no.9, pp.1141-1147, 2019 (Released:2019-11-12)
参考文献数
18
被引用文献数
1

症例は6歳,女児.豚肉摂取後に全身の掻痒感や蕁麻疹が反復して来院した.住環境は自宅1階が獣医の両親が開業する動物病院で,犬を飼っている.抗原特異的IgEはネコ皮屑,イヌ皮屑,豚肉,Sus s 1,Fel d 2,Canf 1,Can f 2,Can f 3が高値(≥50UA/ml),プリックテストは生の豚肉と牛肉が陽性であった.患者血清IgEを使用したWestern blottingで豚肉とネコ被毛上皮抽出物中の同じ分子量(67kDa)の蛋白に結合を認め,阻害試験で交差反応が確認されたことを基にpork-cat syndromeと診断した.更に豚肉とイヌ被毛上皮抽出物にも交差反応が確認され,感作にネコとイヌ両者の関与が示唆された.食肉は十分に加熱し摂取することを指導し以後日常生活に支障はない.本症候群は感作から交差反応に数年以上を要するため思春期から若年成人発症例が多く,本例は調べ得た限り英文誌・和文誌の既報中最も若年発症であった.本症候群はペット動物-食肉アレルギー症候群の名称が病態を理解しやすい.
著者
中内 恵美 鷲尾 健 三木 康子 正木 太朗 錦織 千佳子
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.15, no.6, pp.470-475, 2016

50歳代,男性。糖尿病性腎症による腎不全にて10年来血液透析を施行されていた。2015年春頃より左第2,3指,右第1,4趾に壊死の付着した潰瘍が出現し,悪化したため前医より当科に紹介受診となり,同年6月に精査加療目的に入院した。単純X線検査などからカルシフィラキシスを疑い,Ca・P 値の内科的調整を行った上で局所のデブリドマンを行ったところ指趾潰瘍が改善したため同年8月に退院し外来加療を継続した。しかし,同年冬頃から再度右第4趾の壊死の悪化,および第3趾潰瘍が新生したため2016年初頭に再入院となった。入院時,足趾の壊死に加えて両下腿伸側にそう痒性の角化を伴った粟粒大から大豆大までの紅色丘疹ないし小結節が多発していた。右第3趾からの生検による病理組織学的所見からカルシフィラキシスと診断した。また両下腿伸側の結節からは変性した弾性線維の経表皮的排出像があり,長年の糖尿病や透析に伴う acquired perforating dermatosis と考えた。カルシフィラキシスの治療に対してチオ硫酸ナトリウムの点滴静注を行ったところ,両下腿の角化性局面も平坦化して改善を認めた。チオ硫酸ナトリウムは組織に沈着している不溶物を可溶化し,さらに炎症を抑制することで acquired perforating dermatosis をも改善させたと考えた。(皮膚の科学,15: 470-475, 2016)