著者
三枝 幹生
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.B3P1335-B3P1335, 2009

【はじめに】「純粋無動症とは歩行に際してすくみ足と加速現象を特徴とするが、振戦や筋固縮を認めず、L-DOPAが無効である神経症候である.…中略…、純粋無動症の経過観察中に進行性核上性麻痺と同一の症候が出現した症例や神経病理学的に進行性核上性麻痺と診断された症例が報告され、純粋無動症は進行性核上性麻痺の非定型例または病初期の症候の可能性がある(南山堂 医学大辞典第19版より抜粋).」この診断名のもとに週1回の通所リハビリテーションを利用される利用者に対して、理学療法士ができたこと、そして考えられた今後の地域課題について報告する.<BR><BR>【症例】72歳・男性.退職後は、多趣味であり幅広く活動していたが、平成16年頃から「身体が思うように動かない」ことを自覚.徐々に右足の引きずり、両足のすくみ足が著明となり、平成20年1月に純粋無動症と診断される.同年3月より短時間の通所リハビリテーションを週1回で利用開始となる.現在、週1回は変更なく、通常時間での利用をされている.介護度は要支援1、通院は投薬調整の目的で3週ごとに通われている.<BR><BR>【経過】通所開始時、FIM124点.歩行・階段の項目のみ各6点.すくみ足著明だがT字杖で身辺ADL自立.右遊脚時に下垂足みられ足部の引きずりが認められるが、靴着用で減少する.感覚障害は右足外側に軽度の痺れ訴えあり.住環境の整備・筋力および全身持久力の維持・すくみ足の緩和を目標に個別メニューを作成し実施した.現在、自宅内は早期に生活導線へ手すりを設置したこともありADLは自立、FIMは一部修正自立で121点.筋力・全身持久力は良好に維持されているが、すくみ足の増強が認められ歩行速度・TUGなど低下傾向にある.これに伴い自宅での外出は減少傾向となっている.<BR><BR>【考察】その都度の運動指導は、本人の理解や認識にも左右されるものの週1回の通所リハビリテーションでも十分行える.筋力そのものの維持は可能であったが、すくみ足の症状について改善は得られなかった.パーキンソン病などと異なり純粋無動症は内服の効果が期待できないとされていることからも今後は易転倒の増加が考えられる.また疾患が特異的であるため情報が少なく、利用者本人と家族、介護現場のスタッフの不安も非常に大きい.「医療から介護へ」・「病院から自宅へ」のシフトが進められている昨今、医療機関主体で連携パスが進められているが、医師不足で常勤医不在も珍しくはない.医療主体で動き出しにくい場面がある.今後の経過をどのように診ていくのか、自治体の枠、医療・介護の枠、それらを超えた取り組みが必要である.<BR><BR>【倫理的配慮】本報告は本人が特定されないよう配慮するとともに、本人とご家族への説明・承諾を得て報告した.
著者
三枝 幹生
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.B3P1335, 2009 (Released:2009-04-25)

【はじめに】「純粋無動症とは歩行に際してすくみ足と加速現象を特徴とするが、振戦や筋固縮を認めず、L-DOPAが無効である神経症候である.…中略…、純粋無動症の経過観察中に進行性核上性麻痺と同一の症候が出現した症例や神経病理学的に進行性核上性麻痺と診断された症例が報告され、純粋無動症は進行性核上性麻痺の非定型例または病初期の症候の可能性がある(南山堂 医学大辞典第19版より抜粋).」この診断名のもとに週1回の通所リハビリテーションを利用される利用者に対して、理学療法士ができたこと、そして考えられた今後の地域課題について報告する.【症例】72歳・男性.退職後は、多趣味であり幅広く活動していたが、平成16年頃から「身体が思うように動かない」ことを自覚.徐々に右足の引きずり、両足のすくみ足が著明となり、平成20年1月に純粋無動症と診断される.同年3月より短時間の通所リハビリテーションを週1回で利用開始となる.現在、週1回は変更なく、通常時間での利用をされている.介護度は要支援1、通院は投薬調整の目的で3週ごとに通われている.【経過】通所開始時、FIM124点.歩行・階段の項目のみ各6点.すくみ足著明だがT字杖で身辺ADL自立.右遊脚時に下垂足みられ足部の引きずりが認められるが、靴着用で減少する.感覚障害は右足外側に軽度の痺れ訴えあり.住環境の整備・筋力および全身持久力の維持・すくみ足の緩和を目標に個別メニューを作成し実施した.現在、自宅内は早期に生活導線へ手すりを設置したこともありADLは自立、FIMは一部修正自立で121点.筋力・全身持久力は良好に維持されているが、すくみ足の増強が認められ歩行速度・TUGなど低下傾向にある.これに伴い自宅での外出は減少傾向となっている.【考察】その都度の運動指導は、本人の理解や認識にも左右されるものの週1回の通所リハビリテーションでも十分行える.筋力そのものの維持は可能であったが、すくみ足の症状について改善は得られなかった.パーキンソン病などと異なり純粋無動症は内服の効果が期待できないとされていることからも今後は易転倒の増加が考えられる.また疾患が特異的であるため情報が少なく、利用者本人と家族、介護現場のスタッフの不安も非常に大きい.「医療から介護へ」・「病院から自宅へ」のシフトが進められている昨今、医療機関主体で連携パスが進められているが、医師不足で常勤医不在も珍しくはない.医療主体で動き出しにくい場面がある.今後の経過をどのように診ていくのか、自治体の枠、医療・介護の枠、それらを超えた取り組みが必要である.【倫理的配慮】本報告は本人が特定されないよう配慮するとともに、本人とご家族への説明・承諾を得て報告した.