著者
須藤 哲長 寺井 洋子 三枝 早苗 椿下 早絵 佐々木 崇 平松 啓一
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.79-83, 2011 (Released:2011-10-07)
参考文献数
21
被引用文献数
1

小動物臨床の高度化にともない広域抗菌薬が広く用いられるになり,メチシリン耐性 Staphylococcus pseudintermedius(MRSP)が犬に世界的に蔓延している。小動物皮膚科領域においてもMRSPは臨床上深刻な問題となっている。本研究では,日本国内の健康な犬104頭のMRSPおよびメチシリン耐性S. aureus (MRSA)の保菌調査を行い,二次診療施設(大学付属施設)を受診した病犬102頭の保菌率と比較した。健康犬および二次診療受診犬の鼻腔内MRSP保菌率はそれぞれ4.8%,21.6%(p<0.001)であり,二次診療受診犬で有意に高かった。二次診療受診犬は当該施設受診までに相当の抗菌薬選択圧を受けていることが示唆された。健康犬のMRSP保菌率は海外の報告とほぼ同等な結果であった。一方,MRSA保菌率は,健康犬で0%,二次診療受診犬で1.96%と両者に有意差はなかった。どのような抗菌薬選択圧下でもMRSA保菌率が有意に上昇しないことから,犬はMRSAのレゼルボアにはならないことが示唆された。