著者
高尾 彰 中山 恭樹 市川 孝治 三枝 道尚 浅野 聰平 荒巻 謙二
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.92, no.4, pp.530-533, 2001-05-20

結石性膿腎症から敗血症,播種性血管内凝固症候群(以下DIC)を合併し,最終的に多臓器不全(以下MOF)へ至った症例を経験したので報告する.症例は69歳女性.高熱と意識混濁を主訴に当院に搬入された.膿尿強く,KUBにて左尿管結石を認め,搬入2日目に当科紹介となった.理学的所見および血液検査より,敗血症,DICとMOFの状態であった.腹部超音波検査にて,左水腎症と腎周囲膿瘍と思われる嚢胞状腫瘤を認め,経皮的ドレナージでは不十分と考え同日緊急で左腎摘除術を施行した.術後はエンドトキシン吸着療法と持続的血液濾過透析を行い,全身状態安定したため一般病棟へ転棟,現在は病状改善し経過観察中である.今日の救命医療レベルの向上により,DICやMOFの状態をもたらしていても,感染源の完全な除去を目的とした腎摘除術は,治療法の良き選択肢と考えられる.