著者
西山 康弘 西川 大祐 倉繁 拓志 山根 享 早田 俊司 市川 孝治 中村 勇夫 三宅 茂樹 渡邊 健志
出版者
日本泌尿器内視鏡学会
雑誌
Japanese Journal of Endourology (ISSN:21861889)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.29-35, 2016

上部尿路結石症に対するTULは,バスケットカテーテルで抽石することで術中に全ての結石を摘除できる可能性があることが,ESWLに比較しての最大の利点である.<br> TULでは,その手術における目標到達点の設定を適切に行うことが重要で,それが確実な治療を行う上での要点となる.TULの目標到達点としては,大きく三つのレベルに分けて考える.目標到達点の最良レベルは,術中に全ての結石を抽出できる「術中ストーンフリー」で,これを最大の目標として手術に臨む.次のレベルは,抽石はできないが結石を全て自排石可能な大きさまで砕石できる「砕石のみ」である.このレベルでESWLと同等の治療効果であるが,ESWLにおいては術中に全て自排石可能な大きさまで砕石できるのは最良レベルと言える.その次のレベルは尿管ステントが留置でき尿路を確保できる「尿路確保」である.<br> TULの手術難易度は個々の症例で様々であり,「術中ストーンフリー」を目指していたが,術中所見によっては「尿路確保」ができれば最良の治療効果と判断せざるを得ない症例も存在する. <br> 術中ストーンフリーを目指すTULでは,抽石操作を容易にするアクセスシースを積極的に利用し,抽石効率をに意識しながら手術をすることが重要である.アクセスシースが良好に使用できる症例は抽石操作が容易となり,術中ストーンフリーが得やすい.<br> 例えば尿管嵌頓結石は,症例により難易度が大きく異なり,目標到達点を術中に適切に判断しながら手術することが要求される.<br> 尿管陥頓結石を例に図示し,TULの手順,手術時の術者の思考過程を考察することにより,より適切で確実なTULが普及することに貢献したい.
著者
高尾 彰 中山 恭樹 市川 孝治 三枝 道尚 浅野 聰平 荒巻 謙二
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.92, no.4, pp.530-533, 2001-05-20

結石性膿腎症から敗血症,播種性血管内凝固症候群(以下DIC)を合併し,最終的に多臓器不全(以下MOF)へ至った症例を経験したので報告する.症例は69歳女性.高熱と意識混濁を主訴に当院に搬入された.膿尿強く,KUBにて左尿管結石を認め,搬入2日目に当科紹介となった.理学的所見および血液検査より,敗血症,DICとMOFの状態であった.腹部超音波検査にて,左水腎症と腎周囲膿瘍と思われる嚢胞状腫瘤を認め,経皮的ドレナージでは不十分と考え同日緊急で左腎摘除術を施行した.術後はエンドトキシン吸着療法と持続的血液濾過透析を行い,全身状態安定したため一般病棟へ転棟,現在は病状改善し経過観察中である.今日の救命医療レベルの向上により,DICやMOFの状態をもたらしていても,感染源の完全な除去を目的とした腎摘除術は,治療法の良き選択肢と考えられる.