- 著者
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三栗谷 久敏
- 出版者
- 杏林医学会
- 雑誌
- 杏林医学会雑誌 (ISSN:03685829)
- 巻号頁・発行日
- vol.28, no.4, pp.459-474, 1997-12-31 (Released:2017-02-13)
- 参考文献数
- 40
- 被引用文献数
-
1
黄色ブドウ球菌エンテロトキシン(エンテロトキシン)の催吐作用について,食虫目のスンクス(Suncus murinus)を用いて検討した。スンクスはエンテロトキシン,特にエンテロトキシンA(SEA)の腹腔内投与に対して感受性が高く,低濃度で再現性のある嘔吐作用を示した。SEAによる嘔吐のED_<100>は雄スンクス10μg/kg体重,雌スンクス22.5μg/kg体重であった。スンクスのSEAによる嘔吐は,腹腔内の迷走神経切断(Vagotomy)により阻止され,セロトニン5-HT_3阻害薬によって用量依存性に抑制された。さらに,セロトニン枯渇薬の投与によっても嘔吐は阻止された。これらのことから,スンクスのSEAによる嘔吐は,腸管に多く存在する腸クロム親和性細胞から放出されたセロトニンが,腹部迷走神経末端にあるセロトニン5-HT_3受容体を活性化し,その刺激が嘔吐中枢に伝達され,惹起されると考えられた。スンクスにおけるSEAによる嘔吐の誘発に,免疫系の関与は明らかでなかった。