著者
的場 章悟 三浦 健人 尾崎 藍 田村 勝 小倉 淳郎
出版者
公益社団法人 日本繁殖生物学会
雑誌
日本繁殖生物学会 講演要旨集 第113回日本繁殖生物学会大会
巻号頁・発行日
pp.P-89, 2020 (Released:2020-10-13)

【目的】性を持つ生物では器官ごとに雌雄で異なる表現型を示し,これらの雌雄差は「性スペクトラム表現型」と呼ばれている。哺乳類の性スペクトラム表現型はY染色体の有無によって決定されていると考えられるが,Sry遺伝子が精巣決定因子であること以外に,Y染色体上の各遺伝子が性スペクトラム表現型に与える影響はほとんど不明である。本研究では,マウスY染色体上の遺伝子についてTriple CRISPR法を用いてノックアウト(KO)マウスを作出し,Y染色体上遺伝子が性スペクトラム表現型にどの程度関わるかを網羅的かつ定量的に明らかにすることを目的とした。【方法・結果】Y染色体上の10個の遺伝子(Sry, Eif2s3y, Kdm5d, Uty, Usp9y, Ddx3y, Rbm31y, Uba1y1, Zfy1, Zfy2)について,Triple CRISPR法によってC57BL/6J系統の受精卵から直接KOマウスを作出した。既報通り,SryをKOすると全個体が雌へと性転換し,Eif2s3yをKOすると全個体で精巣の顕著な委縮が認められた。これらのマウスおよび野生型の雌雄マウスの性的表現型を表現型解析パイプラインに乗せて網羅的かつ定量的に解析した。その結果,野生型の雌雄マウス間に存在する新規に記載するべき性スペクトラム表現型(顔面相貌・骨格および臓器サイズ・BMIなどのボディバランス)をいくつも発見した。さらにY染色体上遺伝子のKOによって変動する形態的な性スペクトラム表現型(体重・体長・BMIなど)も同定した。【結論】まず,Triple CRISPR法によりY染色体上遺伝子についても高効率でKOマウスを作出できることを示した。また,Y染色体上に存在するSry以外の遺伝子も様々な性スペクトラム表現型に関与しうることを示した。本研究の結果は,マウスの性スペクトラム表現型とY染色体上遺伝子との関係を詳細に記載するだけでなく,ヒト性スペクトラム異常症の新規モデルを提供しうるものである。
著者
三浦 健人 北舘 健太郎 西岡 浩
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.1-7, 2009 (Released:2009-03-12)
参考文献数
28
被引用文献数
1 1

AHCC は Active Hexose Correlated Compound の頭文字をとってつけられた名称で,シイタケ (Lentinula edodes) 属に属する担子菌の菌糸体を大型タンクで液体培養したものから抽出される物質である.現在ではがん患者による利用頻度の高い健康食品として医療現場でも用いられている他,最近の研究で感染症や炎症性疾患にも有効であることが明らかとなってきている.各種安全性試験によって食品としての安全性が確認されている他,薬物との相互作用についても基礎の研究がなされている.健常人を対象とした第一相安全性試験も実施されており,臨床現場で使用される食品として安全であると結論されている. 本報では AHCC の抗癌剤の副作用軽減効果,免疫調節作用,感染防御作用,抗炎症作用など最近の研究成果について概説する.