著者
佐藤 大記 二瓶 真人 堀野 智史 三浦 克志
出版者
一般社団法人日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.573-578, 2020-12-20 (Released:2020-12-20)
参考文献数
11

【目的】食物アレルギー診療ガイドライン2016では,食物経口負荷試験(OFC)で重症度分類グレード1(軽症)の症状が見られた際には自宅での反復摂取を勧めている.本研究ではOFCで軽症症状を来した症例における自宅反復摂取の安全性を評価する.【方法】2013年1月から2018年4月に宮城県立こども病院で鶏卵,牛乳,小麦,ピーナッツOFCを受け,グレード1に相当する症状が見られた症例を対象に,自宅反復摂取時の誘発症状や転帰を後方視的に検討した.【結果】161例が解析対象となった.検査時年齢中央値3.9歳,総IgE値418 IU/mL,合併疾患はアトピー性皮膚炎または湿疹159例,気管支喘息69例であった.自宅でOFCと同量の負荷食品を反復摂取し症状なし144例(89.4%),症状あり17例(10.6%)であった.症状の重症度はグレード1が16例,グレード2が1例であった.【結論】OFCでの症状が軽症であった場合,自宅反復摂取は比較的安全であるが,症状誘発時の対応の指導が必要である.
著者
佐藤 大記 二瓶 真人 堀野 智史 北沢 博 三浦 克志
出版者
一般社団法人日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.123-128, 2019 (Released:2019-03-31)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

【背景】そばによる即時型食物アレルギーは学童期以降で頻度が高い. また他の食品に比べ, アナフィラキシーを起こしやすく, 寛解しにくいといわれている. そばアレルギーに対する経口免疫療法の論文報告はない. 【方法】アナフィラキシー既往のあるそばアレルギー児のうち文書で同意を得られた患児に対して入院管理下に十割そばの食物経口負荷試験を行い, 安全に摂取可能な量を確認した. 自宅でそばを連日摂取し, 4週間ごとの外来食物負荷試験で20から50%ずつ増量するプロトコルで緩徐経口免疫療法を実施した. 【症例】症例1 : 8歳男児. 7歳時にそば打ちの会場でアナフィラキシーを認め, 当科を受診した. 症例2 : 11歳男児. 5歳時にそば一人前を初めて摂取しアナフィラキシーを認め, 当科を受診した. 【結果】それぞれ1年, 3年の期間をかけてアナフィラキシーをきたすことなく維持量 (150g, 200g) に到達した. 【結語】そばアレルギーにおいても緩徐経口免疫療法が有効な症例が存在することが示唆された.
著者
山岡 明子 阿部 弘 渡邊 庸平 角田 文彦 梅林 宏明 稲垣 徹史 虻川 大樹 柳田 紀之 箕浦 貴則 森川 みき 近藤 直実 三浦 克志
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.801-809, 2011
被引用文献数
10

【目的】アレルギー疾患を有する小児が東日本大震災によってどのような影響を受けたかを調査し,今後の対応を検討する.<br> 【対象と方法】対象は,宮城県立こども病院総合診療科,仙台医療センター小児科,森川小児科アレルギー科を定期受診した402名のアレルギー疾患の小児の保護者.口頭で同意を得た後,外来の待ち時間にアンケート記入を行い,診察時に回収した.<br> 【結果】困った事で最も多かった回答は,それぞれ,気管支喘息では「停電のため電動式吸入器が使用できなかった」,アトピー性皮膚炎では「入浴できず湿疹が悪化した」,食物アレルギーでは「アレルギー用ミルクやアレルギー対応食品を手に入れるのが大変だった」であった.<br> 【まとめ】大震災に対する今後の対応として,気管支喘息では停電の時でも吸入できるような吸入薬や吸入器の備え,アトピー性皮膚炎では入浴できない時のスキンケアの指導,食物アレルギーではアレルギー用ミルクを含めたアレルギー対応食品の備蓄や避難所などの公的機関で食物アレルギーへの理解を深める啓蒙活動が必要と考えた.<br>