著者
大野 佳子 三瓶 舞紀子 長谷川 文香 松隈 誠矢 半谷 まゆみ 森崎 菜穂
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.135-148, 2023-02-15 (Released:2023-03-02)
参考文献数
34

目的 コロナ禍の学校では感染対策に伴い行動が制限されるなか,こどもはどのような意見を持っているのか,そのテキスト(語られた言葉)の構造および保護者の心理・社会経済状況による特徴を明らかにすることを目的とした。方法 2020年9~10月に実施されたWeb調査「コロナ×こどもアンケート第3回調査」の回答者(小・中・高校生相当の男女)2,111人のうち,自由記述による有効回答が得られた1,140人のテキストデータを対象とした。質問内容は「いま気になることや言いたいこと[本音]」および「どのようにすればいいと思いますか?誰がどのようなことをしてくれたらいいと思いますか?[実行案]」であった。保護者の属性には年齢,仕事の有無,心理的苦痛尺度(K6),経済状態等を保護者から情報収集し,分析にはテキストマイニングソフトによる頻度分析,特徴分析,ことばネットワーク(単語関連図)作成を行った。結果 [本音]と[実行案]のテキストは総行数(回答者数)531,1,017であり,平均行長(文字数)21.5,31.5であった。係り受け頻度分析では[実行案]が「話-聞く」等であり,[本音]では「行事-無くなる」「マスク-外す」等が多かった。ことばネットワークでは[実行案]で最もノードの大きい「私」に「動く」「話しかける」等が強く共起のネットワークを形成していた一方,[本音]では「COVID-19」に「終息+?」「無くなる+したい」等が強く共起していた。保護者の属性による特徴的な単語(補完類似度)は,[実行案]では仕事あり群で「話(35.9)」,K6良い群で「話(26.6)」であり,K6不良群で「分かる+ない(23.5)」,経済状況悪群で「分かる+ない(17.3)」であった。一方,[本音]では仕事あり群および精神的健康度の高い群で「COVID-19(28.1,27.5)」であった。結論 こどもの本音ではCOVID-19に対する不快感や怖れを持っている一方で,実行案を問うと「私」が主体となって動き,他者に話しかけると同時に,誰かに話を聞いてもらいたい意思のあることが明らかになった。保護者の心理的苦痛と経済状況が良くないこどもの実行案の特徴として“分からない”が多かった。
著者
大野 佳子 三瓶 舞紀子 長谷川 文香 松隈 誠矢 半谷 まゆみ 森崎 菜穂
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
pp.21-144, (Released:2022-11-08)
参考文献数
34

目的 コロナ禍の学校では感染対策に伴い行動が制限されるなか,こどもはどのような意見を持っているのか,そのテキスト(語られた言葉)の構造および保護者の心理・社会経済状況による特徴を明らかにすることを目的とした。方法 2020年9~10月に実施されたWeb調査「コロナ×こどもアンケート第3回調査」の回答者(小・中・高校生相当の男女)2,111人のうち,自由記述による有効回答が得られた1,140人のテキストデータを対象とした。質問内容は「いま気になることや言いたいこと[本音]」および「どのようにすればいいと思いますか?誰がどのようなことをしてくれたらいいと思いますか?[実行案]」であった。保護者の属性には年齢,仕事の有無,心理的苦痛尺度(K6),経済状態等を保護者から情報収集し,分析にはテキストマイニングソフトによる頻度分析,特徴分析,ことばネットワーク(単語関連図)作成を行った。結果 [本音]と[実行案]のテキストは総行数(回答者数)531,1,017であり,平均行長(文字数)21.5,31.5であった。係り受け頻度分析では[実行案]が「話-聞く」等であり,[本音]では「行事-無くなる」「マスク-外す」等が多かった。ことばネットワークでは[実行案]で最もノードの大きい「私」に「動く」「話しかける」等が強く共起のネットワークを形成していた一方,[本音]では「COVID-19」に「終息+?」「無くなる+したい」等が強く共起していた。保護者の属性による特徴的な単語(補完類似度)は,[実行案]では仕事あり群で「話(35.9)」,K6良い群で「話(26.6)」であり,K6不良群で「分かる+ない(23.5)」,経済状況悪群で「分かる+ない(17.3)」であった。一方,[本音]では仕事あり群および精神的健康度の高い群で「COVID-19(28.1,27.5)」であった。結論 こどもの本音ではCOVID-19に対する不快感や怖れを持っている一方で,実行案を問うと「私」が主体となって動き,他者に話しかけると同時に,誰かに話を聞いてもらいたい意思のあることが明らかになった。保護者の心理的苦痛と経済状況が良くないこどもの実行案の特徴として“分からない”が多かった。
著者
三瓶 舞紀子 藤原 武男 伊角 彩
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.393-404, 2021-06-15 (Released:2021-06-25)
参考文献数
29

目的 欧米の研究では,妊娠期や出産後早期に泣きに関する知識やその対処に関する知識教育をすることで,乳幼児揺さぶられ症候群を予防できるといわれている。しかし本邦で妊娠期におけるこれらの教育の効果を検証した研究はない。本研究では,厚生労働省が作成した乳幼児揺さぶられ症候群予防のための教育的動画「赤ちゃんが泣きやまない」を妊娠期に視聴することによる知識向上に関して検証することを目的とした。方法 2013年4月1日~2014年3月31日の間に全国の46自治体で,妊娠中の両親学級の機会を利用して教育的動画の視聴と効果検証のための調査票の配布を行った。調査票の主な項目は,本人および家族の属性,妊娠がわかった時の状況,泣きおよび揺さぶりに関する知識であり,泣きおよび揺さぶりに関する知識についてはビデオ視聴後にも確認した。5,246人に調査票を配布し4,769人から回収し(回答率91%),泣きに関するおよび揺さぶりに関する知識について回答がある4,647人(有効回答率89%)を分析対象とした。 これまでの研究と同様に,泣きに関する知識については「赤ちゃんが泣いているときにいつもどこか具合が悪いサインだと思いますか」など計6問,揺さぶりに関する知識については「泣き止ませるために赤ちゃんを激しく揺さぶることは,良い方法だと思いますか」など計2問で測った。4件法による回答を0~3点とし,それぞれ動画視聴の前後で合計点を0-100点に換算し前後比較した。さらに属性に関して層別化および前後の増加分に対する回帰分析を行った。結果 泣きに関する知識については,視聴前後で17.5点(95%信頼区間;CI;17.1-17.9),揺さぶりに関する知識については,視聴前後で6.8点(95%CI;6.3-7.2)と,有意に知識の増加が認められた。これらは,属性等に関してそれぞれ層別化しても,同様の結果であった。さらに,知識の増加分に対する共変量の回帰分析の結果,泣きに関する知識では,回答者が男性,第1子,うつ傾向ではない者が知識の増加がより顕著であった。揺さぶりに関する知識では男性,第1子,妊娠時の気持ちに「予想外だがうれしかった」と回答した者が知識の増加がより顕著であった。結論 乳児の泣きおよび揺さぶりに関する教育的動画の妊娠期の視聴により,父親となる者を含むどの属性においても知識の向上が確認された。
著者
伊角 彩 藤原 武男 三瓶 舞紀子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.66, no.11, pp.702-711, 2019-11-15 (Released:2019-11-26)
参考文献数
22

目的 本研究は,死亡率の高い乳幼児揺さぶられ症候群の予防のために厚生労働省が作成した乳児の泣きに関する教育的動画「赤ちゃんが泣き止まない」によって,乳児期の子どもをもつ親の泣きや揺さぶりに関する知識が向上するかについて効果検証を行うことを目的とした。方法 調査協力の得られた全国の29自治体が,2013年4月1日~2014年3月31日に3~4か月時の乳幼児健診などの機会を利用して1歳未満の子どもをもつ親を対象に教育的動画を視聴させ,その前後に配布した調査票データの2次解析を行った(N=1,444)。調査票を回収した1,354人(回収率93.8%)のうち,主たる変数の回答に欠損がない1,232人を分析対象とした。調査票では,泣きに関する知識を問う6項目(例:「赤ちゃんが泣いているときにいつもどこか具合が悪いサインだと思いますか」)と揺さぶりに関する知識を問う2項目(例:「泣き止ませるために赤ちゃんを激しく揺さぶることは,良い方法だと思いますか」)について4件法(0~3点)で親に回答を求めた。それぞれの知識に関して合計点(0~100点に換算)を求め,動画視聴の前後で比較した。また親・子ども・世帯の属性や妊娠・出産後の状況による層別化分析,さらに知識スコアの上昇分に関して回帰分析を行った。結果 動画視聴によって泣きに関する知識が12.4点(95%信頼区間:11.7-13.2),揺さぶりに関する知識が4.7点(95%信頼区間:3.9-5.6),有意に上昇した。親の年齢・性別,子の月齢・性別,第一子,婚姻状況,学歴,世帯収入,祖父母との同居,産後うつ,妊娠期からの家庭内暴力(DV),妊娠がわかったときの気持ち,居住地の規模に関してそれぞれ層別化した結果,既婚以外の群と身体的DV被害者群を除いたすべてのサブグループで,有意な知識の増加が確認された。また,動画視聴前後の知識上昇分をアウトカムとして重回帰分析を行ったところ,親の学歴が低い場合より高い方が泣きの知識の上昇分が高かった。揺さぶりに関しては,女性より男性の方が知識が増加し,また祖父母と同居している場合より同居していない方が知識が増加していた。結論 乳児の泣きに関する教育的動画の視聴は,3~4か月時の乳児をもつ親の属性や状況に関わらず,泣きや揺さぶりの知識を向上させる効果があることが確認された。