著者
三簾 久夫 堀内 久太郎 Chakhatrakan Somchai 齋藤 修平
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.46-53, 2008-06-15

本論文は,タイ・チャオプラヤ河デルタ上流域Sing Buri県におけるNew Theory農家の食料自給と経営成果について論じたものである。具体的には,調査農家38戸の農業所得と農外所得を含めた農家所得,作目構成,有機質資源の循環等の経営概要を明らかにした。第1に,New Theory農家の食料自給を論じるために,食料自足率,家計仕向率,食料自給率を算出した。結果はそれぞれ,36.8%,11.0%,901.8%となり,Sing Buri県におけるNew Theory農家は,生存レベル(自給農家)を超えているが,New Theory農業の意図している食料自給が十分に実践されていないことが明らかになった。第2に,New Theory農家の所得水準を論じるために,世界銀行およびタイ政府の2つの貧困ラインを基準として調査農家の貧困係数をそれぞれ算出した。その結果,世界銀行基準(1人当たり1日1ドル)では0.482となり,経済的に豊かであるが,タイ政府基準(1人当たり1日200Baht)では2.69となり,貧困であることが明らかになった。