著者
小泉 武夫
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.219-229, 2010-03-15

今日,わが国に於いて焼酎は一大発展を遂げ,今やその消費量や生産量は日本酒を大きく引き離している。ところがこの焼酎は,一体どこから渡来してきたのかは明らかになっていない。大陸説,中国説,南方南洋説などさまざま論じられているが,今から400年以上も前のことであるので正しい検証はされていない。つまり日本の焼酎の歴史の原点部は今もって明らかにされていないのである。そこで筆者は中国,そして東南アジアの諸国を20年近く調査してきて,そのルーツが中国雲南省に在り,それがメコン川を通して南方に渡り,シャム(今のタイ国)から琉球を経て薩摩に来たことを,多くの文献や,現地での証拠写真などから検証し,証明した。そしてその焼酎が日本に入ってきてから,今度はこの国独自の知恵や発想によってさらに技術的発展を遂げ今日に至ったことを論じる。
著者
金 玲花 中野 亜里沙 安藤 元一
出版者
東京農業大学
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.137-144, 2014 (Released:2014-10-29)

自由行動ネコが野生鳥獣にどのような捕食圧を与えているか,神奈川県厚木市で調査した。神奈川県自然環境保全センターの傷病鳥獣保護記録を調べたところ,保護鳥獣の10%はネコに襲われたものであり,キジバトやスズメなど地上採餌性の種,あるいはヒヨドリなどの都市鳥が多かった。育雛期である5-7月には鳥類の巣内ヒナが半数以上を占め,ネコの襲いやすい位置に営巣するツバメなどが多かった。同市の住宅地帯および農村地帯におけるアンケート調査では,ネコは13%の世帯で飼育されていた。このうち屋外を自由行動できる飼いネコの比率は,住宅地で29%,農村で59%であり,生息密度に換算すると住宅地で2.2頭/ha,農村で0.35頭/haと推定された。こうしたネコが家に持ち帰る獲物の種類は,住宅地では小鳥と昆虫が多く,農村ではネズミ,小鳥や昆虫など多様であった。持ち帰った獲物の半分以上は食されなかった。これらのネコが年間60頭程度の鳥獣を捕らえると仮定すると,1年に捕食される鳥獣はそれぞれ132頭/ha,21頭/haと推定された。飼いネコによる生態系への影響を避けるためには,室内飼いが望まれる。
著者
金 玲花 中野 亜里沙 安藤 元一 Kim Ryonghwa Arisa Nakano Motokazu Ando
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.137-144, 2014-09

自由行動ネコが野生鳥獣にどのような捕食圧を与えているか,神奈川県厚木市で調査した。神奈川県自然環境保全センターの傷病鳥獣保護記録を調べたところ,保護鳥獣の10%はネコに襲われたものであり,キジバトやスズメなど地上採餌性の種,あるいはヒヨドリなどの都市鳥が多かった。育雛期である5-7月には鳥類の巣内ヒナが半数以上を占め,ネコの襲いやすい位置に営巣するツバメなどが多かった。同市の住宅地帯および農村地帯におけるアンケート調査では,ネコは13%の世帯で飼育されていた。このうち屋外を自由行動できる飼いネコの比率は,住宅地で29%,農村で59%であり,生息密度に換算すると住宅地で2.2頭/ha,農村で0.35頭/haと推定された。こうしたネコが家に持ち帰る獲物の種類は,住宅地では小鳥と昆虫が多く,農村ではネズミ,小鳥や昆虫など多様であった。持ち帰った獲物の半分以上は食されなかった。これらのネコが年間60頭程度の鳥獣を捕らえると仮定すると,1年に捕食される鳥獣はそれぞれ132頭/ha,21頭/haと推定された。飼いネコによる生態系への影響を避けるためには,室内飼いが望まれる。
著者
吉田 光司 亀山 慶晃 根本 正之 Koji YOSHIDA KAMEYAMA Yoshiaki NEMOTO Masayuki
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.10-14, 2009-06

ナガミヒナゲシが日本国内で生育地を拡大している原因を解明するため、1961年に日本で初めて帰化が報告された東京都世田谷区と、1990年代以降急速に生育地が増加した東京都稲城市で生育地調査を行った。ナガミヒナゲシの生育地数は、世田谷地区と稲城地区の双方とも道路植桝で最も多く、次いで駐車場や道路に面した住宅地となり、自動車の通過する道路周辺に多いことが判明した。ナガミヒナゲシの生育地は道路植桝から周辺の駐車場へと自動車の移動に伴って拡大したと考えられる。この過程を検証するため、ナガミヒナゲシの在・不在データを応答変数として、道路植桝から駐車場までの距離と舗装の有無、それらの交互作用を説明変数とするロジスティック回帰分析を行った。AICによるモデル選択の結果、世田谷地区ではいずれの説明変数(距離、舗装の有無、それらの交互作用)も選択されなかったのに対し、稲城地区では距離(P=0.07)および距離と舗装の有無の交互作用(P=0.04)がナガミヒナゲシの存在に負の影響を及ぼしていた。これらの結果から、(1)帰化年代の古い世田谷地区では生育地拡大が完了しており、主要道路からの距離や舗装の有無とは無関係にナガミヒナゲシが生育していること、(2)稲城地区では生育地拡大の途上であり、その過程は道路植桝からの距離だけでなく、距離と舗装の有無との交互作用によって影響されることが示唆された。
著者
大岩 幸太 宮崎 雪乃 岩田 萌実 小川 博 安藤 元一
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.200-208, 2014-12-15

厚木市の中山間地域と平地農業地域における獣害に対する住民感情を2009-2010年にアンケート調査し,1,462件の回答を得た。販売農家は中山間地域で9割以上,平地農業地域で5割が獣害被害を受けていた。いずれの地域でも農作業への関わりの高い住民は野生動物に強い「怒り」を感じるのに対し,農作業への関わりが低くなると「かわいい,うれしい」と感じる傾向が見られた。捕獲駆除については,中山間地域では農作業に関わりの高い住民の賛成率が高まる傾向があったのに対し,平地農業地域では逆の傾向がみられた。性別で見ると,男性の捕獲駆除賛成率が中山間地において高かったのに対し,女性における地域差は少なかった。行政への要望として,中山間地域では情報提供や資金・物品提供など農地を守るために直接役立つ対策への要望が強かったが多いのに対し,駆除の促進への要望順位は低かった。しかし,アンケートから判明した住民の求める要望と,行政が行っている実際の獣害対策を比較すると,住民の要望が反映されているのは駆除対策だけであった。
著者
増田 宏司 田所 理紗 土田 あさみ 内山 秀彦
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.151-155, 2015-12-18

ペット(犬,猫)を亡くした経験を持つ20代前後の飼育経験者に対して自由記述式でアンケートを集め,「もう一度,亡くしたペットに会えるなら,何をしてあげたいか?」について質問した。回答として得られたものをテキストデータ化し,テキストマイニングを行い,文字数,単語数を比較した。また分析により抽出された名詞を基準に,回答をカテゴリーデータ(1/0)に変換後,数量化III類解析を施した。アンケート実施により,犬の飼育経験者141名,猫の飼育経験者55名から有効な回答が得られた。その結果,猫の飼育経験者の回答文は文字数,単語数共に犬の飼育経験者よりも有意に多いことが判明した。さらに,数量化III類解析(n=149)においても,犬と猫の飼育経験者で有意な差が認められ,犬の飼育経験者は懐古的な内容を,猫の飼育経験者は惜別的な内容を記述すると考えられた。また,犬の飼育経験者の文字数,単語数は,飼育していたイヌの大きさによって有意に異なった。
著者
川嶋 舟 福本 瑠衣 内山 秀彦 Schu Kawashima Fukumoto Rui Uchiyama Hidehiko
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.159-164, 2013-12

馬は使役動物として人の生活において重要な役割を担ってきた。近年では動物介在療法へも応用を広げ,人と馬との新たな関係を構築しつつある。しかしながら,馬の認知能力については,科学的な研究不足から長い間正しい理解がされずにいた。馬の認知能力を理解することは,飼育方法・訓練の効率化,飼育環境の適切な改良,そして馬を用いた福祉的活動の発展といった応用につながると考えられる。そこで本研究は,馬の認知能力の中でも,特に人の認識状況下における聴覚および視覚情報認知の関係性を明らかにし,馬と人との関係性について考察することを目的とした。十分にトレーニングされた馬において,管理で用いられる個体の呼称や指示に関する音声刺激を提示し,馬の行動を観察,得点化した。このとき実験補助者,馬の管理者,既知の人物,未知の人物の音声刺激に対する得点の比較を行った。得られたデータから,耳の動き,目線,接近行動に有意な点数の違いがみられた。耳の動きは,未知の者と比較したとき,有意に実験補助者ならびに馬管理者の音声刺激に対する点数が高く注意を向けていた。また,目線は既知の者より未知の者が有意に高い点数となり未知のものを注視した。さらに人に対する接近行動は,未知の者と比べ管理者や既知の者の音声刺激に対し有意に近い位置を示した。これらの結果から,馬は聴覚,視覚によって人ならびに状況を認知し,人物を弁別と記憶をしていることが示唆された。またその認知過程には第一に聴覚情報を受容し,特に未知の者など認識がなく情報の一致性がない場合,視覚情報を用いてこの統合を行い,行動に移行すると考えられた。これらのことは,馬との相互関係において,積極的に声をかけることが動物介在療法など様々な活動下での対象者の認識を強め,あるいは信頼関係という領域を築く上で極めて重要であると考えられる。
著者
新村 洋一
出版者
東京農業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本申請の目的は、強力な過酸化脂質分解力を持つ食品乳酸菌を開発し、その腸内導入による腸内過酸化脂質分解の促進化である。平成16年度で、過酸化物分解酵素を有する乳酸菌を分離するための培地を開発し、強力な過酸化物分解力を持つ有用菌株を分離した。17年度では、分離乳酸菌を同定後、過酸化物分解力を評価し、分解機構について考察した。1.分離菌株の簡易同定とグルーピング:分離株を簡易同定(乳酸菌マニュアル、朝倉書店)後、病原性乳酸菌の可能性のある株は除外し、食品に応用できる可能性の菌株を48株を選抜した。分離株のうち過酸化脂質分解力が高い4株を16sDNAシークエンス法と性状解析法により完全同定した。4株ともLactobacillus plantarumに属していた。2.分離株の過酸化脂質分解力の評価:分離株を過酸化脂質と2価鉄を含まない乳酸菌標準培地(GYP)を用いて、好気振とう培養後集菌し、37度Cで過酸化脂質分解力を測定した。過酸化脂質として過酸化リノール酸と活性測定のためのモデル化合物として過酸化クメンを用いた。また親水性基質として過酸化水素を用いた。最も過酸化脂質分解活性が高い株は、Lactobacillus plantarum Pan1-2株であった。この株は過酸化クメンを分解するが、親水性過酸化物の過酸化水素に対しての活性はその約半分であった。3.休止菌体による過酸化物分解機構解析:過酸化ブチルを用いてL.plantarum Pan1-2株における、反応産物を同定した。過酸化ブチルはブタノールに等量的に還元されており、同株が過酸化物を2電子還元することが示唆された。
著者
土田 あさみ 秋田 真菜美 増田 宏司 大石 孝雄 Asami TSUCHIDA AKITA Manami MASUDA Koji OISHI Takao 東京農業大学農学部バイオセラピー学科伴侶動物学研究室 埼玉県吉川市健康福祉部 東京農業大学農学部バイオセラピー学科伴侶動物学研究室 東京農業大学農学部バイオセラピー学科伴侶動物学研究室 Department of Human and Animal-Plant Relationships Faculty of Agriculture Tokyo University of Agriculture National Pension and Health Insurance Division Yoshikawa City Office Department of Human and Animal-Plant Relationships Faculty of Agriculture Tokyo University of Agriculture Department of Human and Animal-Plant Relationships Faculty of Agriculture Tokyo University of Agriculture
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.119-125,

ノラ猫問題を解決する一つの対策として地域猫活動が各地で行われており,一部の行政でその活動を支援している。そこで,その支援状況とその効果を検討するために,全国の自治体を対象として調査用紙を配布し,2008年度における情報を収集した。その結果,東京都特別区で地域猫活動を支援する行政が多く認められた。また,政令指定都市,中核市および都道府県のいずれの行政でも地域猫活動の地域がないと回答したところが多かった。条例や制度,避妊去勢手術費の補助,講習会開催等の支援措置は,東京都特別区および東京都市部で多く,中核市および都道府県では少ない状況であった。今回の調査では地域猫活動を行政が支援することが,猫に関する苦情の減少,猫の処分数の減少,また住民間の親密の増加等に対して有効であるかどうかについては明らかにならなかったものの,行政機関がノラ猫対策を早めにとることや,その支援を積極的に行うことなどが,猫の処分数を減らすのに有効である可能性が示唆された。Activities by community volunteers who care for stray cats, such as neutering and caring for stray cats, were supported at various administrative levels in Japan. In order to identify the status of the activities in which support is provided by the administrations and to assess the effect, we conducted a questionnaire survey to each government in 2008. The activities to support volunteer activities related to stray cats was significantly higher in the 23 wards of Tokyo than in other cities in Tokyo. Many of the local administrations did not have information about whether there were any such activities. There were significantly more administrations in the 23 wards of Tokyo and the other cities in Tokyo than in local administrations, which supported the activities such as enacting ordinances and animal protection promotion plans, and providing financial assistance to cover the cost of sterilization surgeries. This study could not clarify the effects of these support activities on reducing the number of and the nuisances caused by stray cats. However, it was suggested that efforts at the early period by every administration to assess the situation of stray cats and offer support activities would make the animal protection plans more effective.
著者
小泉 武夫
出版者
東京農業大学
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.219-229, 2010 (Released:2011-07-26)

今日、わが国に於いて焼酎は一大発展を遂げ、今やその消費量や生産量は日本酒を大きく引き離している。ところがこの焼酎は、一体どこから渡来してきたのかは明らかになっていない。大陸説、中国説、南方南洋説などさまざま論じられているが、今から400年以上も前のことであるので正しい検証はされていない。つまり日本の焼酎の歴史の原点部は今もって明らかにされていないのである。そこで筆者は中国、そして東南アジアの諸国を20年近く調査してきて、そのルーツが中国雲南省に在り、それがメコン川を通して南方に渡り、シャム(今のタイ国)から琉球を経て薩摩に来たことを、多くの文献や、現地での証拠写真などから検証し、証明した。そしてその焼酎が日本に入ってきてから、今度はこの国独自の知恵や発想によってさらに技術的発展を遂げ今日に至ったことを論じる。
著者
高中 健一郎 山縣 瑞恵 安藤 元一 小川 博 TAKANAKA Kenichiro Mizue YAMAGATA Motokazu ANDO Hiroshi OGAWA
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.111-117, 2011-09

側溝に落下して死亡する小型哺乳類が多いことから,本研究では側溝の深さと側溝内の水位が小型哺乳類の脱出成功率にどのように影響するかを調べると共に,保全対策として脱出用スロープの形状を検討した.脱出できなくなる道路側溝の深さは,モグラ類(ヒミズ,アズマモグラおよびコウベモグラ)では15cm,ジネズミでは24cm,スミスネズミおよびハタネズミは30cmであった.アカネズミおよびヒメネズミは深さ30cmの溝からは概ね脱出可能であり,静かな環境では深さ45cmからも一部の個体が脱出できた.脱出に際して地上性のアカネズミはよじ登りよりもジャンプを用いる傾向が強く,半樹上性のヒメネズミはよじ登りを多用した.側溝内に止水がある場合,ネズミ類は小さな側溝からは水位にかかわらず脱出できたが,大きな側溝ではスミスネズミやハタネズミは水位1cm以上で,アカヤズミとヒメネズミは水位5cm以上で脱出できない個体が現れた.ネズミ類の保護対策としては側溝の深さをできるだけ浅くすることが望ましく,モグラ類についてはスロープ付き側溝を用いることが望ましい.スロープには1.5~4.5cm間隔で段差を付け,傾斜角度を45°以下にするとともに,スロープを側壁で挟んで通路幅を5cm程度にとどめることが望ましい.
著者
山田 啓貴 安藤 元一
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.57-62, 2015-06-19

近年における野生動物自動撮影カメラの大部分は,焦電型センサーを用いており,背景温度と対象動物の体表温度との温度差を検知して作動する。本研究の目的は,背景温度と動物体表温度が動物の検知率に与える影響を明らかにすることである。実験には3機種のカメラ(FieldNote Duo,LtlAcorn5210およびTrophyCam Basic Model)を用い,表面温度38℃の被写体の検知率をさまざまな背景温度のもとで調べるとともに,数種類の鳥獣の体表温度を異なる気温条件で調べた。センサーカメラの検知率は,対象動物と背景温度の差が6℃以下になると低下しはじめた。背景温度としての地温が高くなる夏季の昼間には,野外でこのような状況が生じる可能性がある。動物の体表温度は顔面部分では高い値を示したが,胴体部分では毛皮や羽毛の断熱効果によって背景温度と変わらぬ低い値を示すことも多かった。そのため,撮影範囲に胴体部分しか写らないような状況では,夏季以外の季節にも動物を検知できない場合があると予想される。
著者
川嶋 舟 颯田 葉子
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.211-213, 2009-12-15

日本在来馬8馬種(北海道和種馬,木曽馬,野間馬,対州馬,御崎馬,トカラ馬,宮古馬,与那国馬)のミトコンドリアDNAコントロール領域の多型解析を行なった。その結果,8馬種で14ハプロタイプが認められた。系統樹解析の結果,14ハプロタイプ間に明確な遺伝的差異は認められず,日本在来馬の単一起源説を支持するものであった。各馬種のハプロタイプ構成を比較した結果,遺伝的多様性が維持されている馬種や失いつつある馬種の存在が明らかとなった。また,8馬種は互いに明確に異なるハプロタイプ構成を保有することが明らかとなった。これは,各飼養地域内で長期間維持されてきたため,各馬種で固有のハプロタイプ構成を持つに至ったと考えられた。
著者
安藤 元一 上遠 岳彦 川嶋 舟 Motokazu Ando Kamito Takehiko Kawashima Shu
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.275-286, 2013-03

学生が大学入学前にどのような野生動物関連の知識と体験を有しているか,東京農大生を対象に2002年と2012年にアンケート調査した。野外で見たことのある動物は2002年には鳥類>哺乳類>魚類>爬虫類>両生類の順であったが,2012年には爬虫類,両生類,魚類が大きく減少した。後者は水辺などに行かねば見られない動物であることから,この10年間に若年層の自然に触れる機会が減少していると思われた。野生動物に関する知識や意識における10年間の変化は少なかった。野生動物の目撃場所では,自宅周辺や里山が多く,旅行中の目撃頻度は減少傾向にあった。学生がイメージできる野生動物関連職業の数は少なく,動物園や研究職など一部職種に集中していた。好きな日本産動物の上位は陸生の中・大型哺乳類で占められ,食虫目や翼手目への関心は極めて低かった。好きな世界の動物では動物園で見ることのできるライオン,パンダ,ゾウ,コアラ,トラなどの大型獣が上位であった。野生動物に関する情報源としては特定のテレビ番組が大きな役割を果たしており,本では動物図鑑がよく利用されていた。動物系学科で学ぶ学生(東京農業大学)と非動物系の学生(国際基督教大学)を比較すると,野生動物教育の経験を除いて,アンケート結果は類似しており,入学前における野生動物経験の多寡は大学選択に影響していなかった。動物系の異なる研究室(野生動物学と動物介在療法)に所属する学生の野生動物経験を比較したところ,回答傾向は概ね類似したが,後者では鳥類や獣害に対する関心が若干低かった。
著者
吉川 欣亮 設楽 浩志 野口 佳裕 STEVE Brown 奥村 和弘
出版者
東京農業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

新規難聴モデルマウスの樹立およびそれを応用した難聴発症機構の解明を目指し、ポジショナルクローニングおよび分子間相互作用解析に基づき研究を実施した結果、以下の主要な成果を得た。1)2種の難聴モデルマウスの発症原因遺伝子が共通してMyosinVIであることを明らかにした。2)発現解析および蛋白質相互作用解析に基づき、4.1BおよびGelsolinが感覚毛伸長に機能することを明らかにした。3)SansおよびWhrlinの2重変異マウスの表現型から両者が有毛細胞上の感覚毛の平面細胞極性に機能することが示された。
著者
熊澤 恵里子
出版者
東京農業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

幕末維新期来日外国人の平田国学研究の事例として、アーネスト・サトウとペーター・ケンペルマンを中心に日英独における史料調査・収集を行った。ドイツ書記官ケンペルマンについては、先行研究がなく詳細は不明であったが、本研究では現地調査により出自、学歴、職歴をはじめ、その人物像ならびに平田国学への関心を明らかにした。