著者
三重野 雄太郎
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.96-104, 2017 (Released:2018-08-01)
参考文献数
23

ドイツ、オーストリア、スイスにおいては、従来、着床前診断は法律上実質的に禁止されているものと解釈されてきた。しかしながら、近時、この3ヶ国が立て続けに法改正を行い、着床前診断を一定の要件の下で許容することとした。本稿では、日本での立法化に向けた示唆を得るべく、3ヶ国の新法の内容を概観し、それらを比較して共通点と相違点を明確化させた。 3ヶ国とも一定の要件を満たす場合にのみ着床前診断の実施を認め、違反者を処罰すること、遺伝性疾患と関係のない単なる性選別や救世主兄弟を目的とした着床前診断を認めていないことなどの共通点があるが、他方で、ドイツでは公的倫理委員会による審査で認められている場合に着床前診断の実施が認められるが、オーストリアとスイスは公的倫理委員会の承認を着床前診断の要件としていないことなど相違点も見られる。