著者
島津 善美 上原 三喜夫 渡辺 正澄
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.77, no.9, pp.628-633, 1982-09-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
27

日本, ドイツおよびフランス産高級ワインの酒石酸, リンゴ酸乳酸, コハク酸, クエン酸の含量, 総有機酸含量 (TOA) およびリンゴ酸/酒石酸および (MIT) 比とワインタイプの関係ならびにこれら8囚子間の相関関係について検討した。日本白ワイン, ドイツ白ワイン (Kabinett, Spatlese, Auslese, Beerenauslese, Tr0ckenbeerenauslese, Eiswein), フランスシャブリ白ワイン, フランス赤ワインのタイプ別試料106点について, 上記8因子の平均値, 標準偏差を算出した。各タイプの酒石酸リンゴ酸酢酸, TOAおよびM/T比にかなりの差異が認められた。日本ワインは, ドイツおよびシャブリワインよりTOAが少なく, MLFの発生は, ほとんどみられなかった。ドイツワインの上記6タイプのリンゴ酸含量は, 有機竣6成分のなかで最も多く, またそれらのMIT比は, 日本およびシャブリワインより高い値を示した。ドイツワインの乳酸含量は, 比較的少なかったが, フランスのシャブリと赤ワインの乳酸含量は, かなり多く, MLFの発生が高いことが認められた。さらに上記8因子問の相関関係を検討した。試料全体 について相関を求めた結果, リンゴ酸は酒石酸のほかに, MLFに起因する乳酸と酢酸およびコハク酸と1%危険率で相関関係があり, ワインの有機酸組成を決定する中心的役割を演じていることが明らかにされた。またタイプ別の相関分析の結果, ドイツワインの酒石酸とクエン酸, リンゴ酸と酢酸乳酸とクエン酸ならびにシャブリのリンゴ酸とクエン酸, 乳酸と酢酸との間にそれぞれ5%危険率で相関関係が認められた。酒石酸とクエン酸の相関関係は, 原料のブドウ果汁の有機酸組成の差異に, また他の4つの間の相関関係は, MLFによるものと考えられた。また各タイプの酒石酸およびリンゴ酸は, TOAと相関関係にあることが示された。
著者
島津 善美 上原 三喜夫 渡辺 正澄
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.117-122, 1982-02-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
36

健全ブドウ果汁 (7品種), 通常ワイン (白;10点, 赤;10点) および貴腐ワイン (11点) のウロン酸 (グルコン酸ガラクチュロン酸, グルクロン酸) について, 定量を行うとともに, ワイン酵母Sacch. cerevisiae IAM4274と乳酸菌Leu. mesenteroides var. lactosum234によるウロン酸および主要有機酸成分の分解について検討した。1. 健全ブドウ果汁および通常白ワインの総ウロン酸含量は, 少ないが, 貴腐ワインには, グルコン酸およびガラクチュロン酸が, 赤ワインには, ガラクチュロン酸が多量に認められた。2. Sacch. cerevisiae のアルコール発酵により, 果汁中のウロン酸は, ほとんど分解されずにワイン中に残存した。また, 本株により, クエン酸は僅かしか分解されなかった。3. ウロン酸は, ワインの酸味を強めるとともに, 収れん味と味の良い濃厚味を与えることが認められた。4. Leu. mesenteroides var. lactosumは, マロラクチック発酵の発生とともに, グルクロン酸を約46%, グルコン酸を約35%およびクエン酸をほぼ完全に分解した。本菌により, グルコン酸からD-乳酸および酢酸が生成されることが示唆される。終わりにのぞみ, 発表の許可をされたキッコーマン (株) 役員各位, また御高配を賜わった当研究所井口信義所長, 吉田文彦副所長ならびに乳酸菌を恵与された山梨大学工学部野々村英夫教授に深謝する。さらにまた, 本研究に御協力いただいた盛進製薬 (株) 小沢善徳博士およびマンズワイン (株) の各位に感謝する。本研究の大要は, 昭和55年度日本醗酵工学会 (大阪) で発表した。