- 著者
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上原子 晶久
- 出版者
- 弘前大学
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2006
1.塩害と凍害が複合作用する環境下を再現するため,ASTM-C-672法を参考に以下の凍結融解試験を行った.連続繊維シートを接着した上面に3%塩化ナトリウム水溶液を湛水し,凍結サイクル(-15〜-20℃で約17時間)と融解サイクル(+20℃で約7時間)で構成される1回の凍結融解サイクルが約24時間で完了する環境下に80日間暴露した.その後,連続繊維シートとコンクリートとの付着試験と塩化物イオンの浸透量の測定を行った.2.連続繊維シートの種類を炭素繊維,アラミド繊維,ならびにコンクリートの空気量を実験水準として試験体を作製した.試験体は,高さ100mm,縦200mm,横400mmのコンクリートブロックの一面に連続繊維シートを接着したものである.連続繊維シートの接着工程は一般的に採用されているものとし,シートとコンクリートとの接着にはエポキシ樹脂を使用した.3.付着試験の結果,凍結融解による損傷や塩分浸透を受けた場合の連続繊維シートとコンクリートとの付着特性を代表する界面破壊エネルギーは,健全時よりも3割ほど低下する結果が得られた.これについては以下が原因である.すなわち,凍結融解試験においてシート上面に湛水している塩水の影響により母材が過冷却され,それが主因として凍結融解作による母材の劣化をさらに促進しているものと推定される.以上は,試験時において母材内部の温度を計測し,それに基づく温度応力解析の結果からも確認することができた.4.母材への塩化物イオン浸透量を分析した結果,シートの種類によらず塩化物イオンの浸透は認められなかった.以上より連続繊維シートの物質遮蔽性能が優れていることを確認した.