著者
市村 一雄 上山 茂文 後藤 理恵
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.534-539, 1999-05-15
被引用文献数
5 6

バラ切り花における可溶性炭水化物, 特にミオイノシトール, メチルグルコシドおよびキシロースの役割を調べるため, 30g・liter^<-1>スクロースと200mg・liter^<-1>8-ヒドロキシキノリン硫酸塩(HQS)の連続処理によるバラ切り花の器官別の炭水化物含量の変動を調べた.この処理により, 品質保持期間は延長し, 切り花全体の新鮮重は高く維持された.これは花弁の新鮮重の増加によっていた.花弁では, 収穫時にはフルクトース, グルコースおよびスクロースが主要な構成炭水化物であった.キシロース濃度は収穫時には低かったが, 収穫後3日目には著しく増加した.処理の有無によりそれぞれの炭水化物濃度に著しい差はなかった.花弁を除いた花器では, グルコース, フルクトースおよびスクロースが主要な炭水化物であったが, 処理により著しく変動することはなかった.茎ではスクロース, フルクトース, メチルグルコシドが主要な炭水化物であった.これらの炭水化物濃度は時間の経過にともない減少したが, スクロース処理はこの減少を抑制した.葉ではスクロースが最も多く, ミオイノシトールがこれに次いだ.スクロース濃度は収穫後著しく減少したが, 処理によりこの減少は抑制された.ミオイノシトールは処理の有無による変動はほとんどみられなかった.つぼみに各種炭水化物を処理したところ, メチルグルコシドとキシロースは開花を促進したが, ミオイノシトールは促進しなかった.以上の結果より, メチルグルコシドとキシロースはバラ切り花において代謝糖として機能していることが示唆された.