著者
松田 義弘 上木 厚子 上木 勝司
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.104, no.1, pp.57-74, 2009-01-15
被引用文献数
3 4

サクランボ,ラ·フランス,リンゴ,ヤマブドウ及びアケビの各果実から<I>S. cerevisiae</I>を含む43菌株の香気生産性酵母を集積し,分離した。低pHでアルコール存在下での集積培養と集積されてきた酵母について18S rRNA遺伝子の部分配列のPCR–TGGE解析と塩基配列の比較による系統解析を組み合わせることで,自然環境中では稀少種である<I>S. cerevisiae</I>を効率良く分離することができた。<I>S. cerevisiae</I>菌株は,既報のサクランボからの分離株に加えて,ラ·フランスとリンゴから新たに13菌株が分離された。また<I>S. cerevisiae</I>以外でも,合計9菌種25菌株の香気生産性の野生酵母菌株が分離された。<br>分離した野生酵母菌株について炭素源資化性試験を行い生理的性質を調べたところ,ほとんどの菌株では分子系統解析での最近縁種についてのThe Yeast(1998)における記載と合致した。しかし,ラ–フランスから分離した5菌株とリンゴから分離した8菌株の<I>S. cerevisiae</I>菌株は,それぞれL-ソルボース資化性とトレハロース資化性においてThe Yeast(1998)における<I>S. cerevisiae</I>の記載と異なっていた。<I>S. cerevisiae</I>以外の菌株では,サクランボから分離された<I>C. ethanolica</I>関連のCeS 3株がラクトース資化性の点で,リンゴから分離された<I>P. guilliermondii</I>関連のPgR 4株がD-グルコサミン資化性の点で,ヤマブドウから分離された<I>H. uvarum</I>関連のHuY 1株とHuY 2株が2–ケト–グルコン酸の資化性の点でそれぞれの関連菌株についてのThe Yeast(1998)の記載と異なっていた。<br>分離した香気生産性野生酵母菌株の高級アルコールの生産性について主成分分析したところ,<I>S. cerevisiae</I>菌株の場合は,分離源ごとに緩やかな集まりとして判別できた。<I>S. cerevisiae</I>以外の菌株の場合は,種属ごとに緩やかな集まりとして区別された。その中で<I>P. kluyveri</I>の1菌株など菌株により特徴的な香気生産特性を示すものもあった。
著者
平井 英二 山口 幸祐 北村 守次 丁子 哲治 村本 健一郎 上木 勝司 全 浩 李 敏熙 宮崎 元一 QUAN Hao LEE Min-Hee 庄田 丈夫 李 敏煕 小村 純子 山口 幸裕 鍛治 利幸
出版者
北陸大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1993

1.吉林省環境保護局吉林省の劉 淑塋副省長,吉林大学環境科学系の杜 尭国教授らによれば,同省は人口約2,500万人,面積約19万km^2であり,両者とも中国の約2%である。東部は長白山を望み,櫟などの木材資源が豊富であり,中部は松遼平原が広がり,農業が発達している。西部は大草原であり,羊・馬の放牧地である。基幹産業は長春市の自動車,吉林市の化学工業である。大気汚染は,従来から低硫黄(0.4%以下)の石炭を使用せていたが,工業の発展にともない省外の石炭を輸入のため,低硫黄の石炭の確保が困難となり,大気汚染が進行中である。水質汚濁として,地表水のCODは8ppm程度であり,有機物による汚染が進んでいる。さらに,同省の図們江開発にも言及した。また。吉林大学の環境関係の研究は太陽光,粉塵,微生物等の自然界由来の物質を有効利用して汚染物質を低減する研究が集中的に行なわれている。図們江開発にも関係するので,吉林省からの帰路を利用して,大連経済技術開発区を見学と調査を実施した。2.研究成果森林衰退の原因は多くの研究者が様々な地域で研究している。観測,測定が行なわれた地域によって,気象,土壌,樹種,大気中の汚染物質濃度などが異なるため,重要な因子が異なってくる。即ち,土壌酸性化/アルミニウム毒作用説,オゾン説,マグネシウム欠乏説,ストレス説,窒素栄養過剰説があるが,関与している因子が多いことが,この問題を難しいものとしいる。酸性降水は土壌と接触することによって速やかに中和される。この中和反応は多岐であり,炭酸塩の溶解反応,陽及び陰イオンの交換反応,アルミニウムの溶出反応,二酸化炭素の溶解反応がある。これらの反応を総合的にを数式化し,実験と比較し,酸性降水による河川水質のメカニズムを正確に解明できた。β線吸収法による浮遊粒子の解析から黄砂現象の評価するに,黄砂の彼来により酸性雨の成分であるSO_4^<2->とNO_3^-に影響を及ぼし,日本海側における冬期のSO_4^<2->濃度が異常に高い原因の一つに黄砂が関与している可能性が高いことが明らかになった。酸性雨・雪の現象をレーダによって定量的に観測するため,一般的に地上観測データとの重畳によって行なう.そして両者の観測から,レーダ観測で得られるレーダ反射因子(Z)と地上観測で得た降雨や降雪強度(R)の関係を求める。このZ-R関係が求まればレーダ反射因子(Z)から降雨や降雪強度を推定できる。研究ではXバンドレーダを使用し,降雪についてZ-R関係を求めた。短い期間に分割すると良い相関がえられた。3.STRATEGY FOR AIR POLLUTION CONTROL IN EAST ASIAの刊行特に中国は硫黄酸化物が主成分である大気汚染物質の影響が深刻である。よって大都市である重慶市での研究・調査を1991年度から実施すると同時に,大気汚染とその対策のついてのシンポジウムを,重慶市環境保護局と平井班が主催し,1992年10月に同市で「中日大気汚染防止対策シンポジウム-重慶‘92」を開催した。本研究班の全員と四川省,重慶市の研究者や行政担当者が多数参加し,重慶市のマスコミにも大きな関心をあたえた。これらの発表は大気汚染のデータも含むが,大気汚染についての基礎的な事項や環日本海各国の酸性雨の現状,酸性雨の分析,土壌の中和反応機構,湖沼・森林への影響,環境行政,火力発電所の排ガスや環境保全などの多方面にわたっている。これらの発表論文に最近の研究成果を追加して翻訳し,1冊の書に纏めて刊行し,今後に工業化される東アジアの諸国の大気汚染対策に役たてれば,かけがえのない地球のボ-ダレスな環境の解決の一つとなると考えた。これが1994年度の科学研究補助金研究成果公開促進費に採択され,今春に刊行する。東アジア諸国に配布するが,平成8年度の国際学術研究にも活用する予定である。