- 著者
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上杉 慎一
- 出版者
- NHK放送文化研究所
- 雑誌
- 放送研究と調査 (ISSN:02880008)
- 巻号頁・発行日
- vol.72, no.7, pp.38-50, 2022-07-01 (Released:2022-08-20)
2022年2月24日、ロシアが隣国ウクライナに軍事侵攻した。圧倒的な軍事力を背景に、空からのミサイル攻撃と並行し地上軍も進軍させた。当初は首都キーウの陥落も時間の問題とみられた。力による一方的な現状変更にアメリカはじめG7各国は強く反発し、経済制裁を強化した。世界各地で反戦デモが行われ、ロシア国内でも反対の声が上がった。
21世紀に起きた侵略戦争を日本のテレビはどう伝えたのだろうか。それをつかむため、報道量の調査を行った。調査対象期間は侵攻初日から最初の停戦交渉が行われた2月28日までの5日間。調査対象はNHKと民放の夜のニュース番組5番組とした。またこの間の、スタジオ解説や中継・リポート、オンライン取材、SNSで発信された映像についても調査・分析を進めた。調査の結果、期間中の報道では戦況や被害、ロシアの思惑、経済制裁に関する報道量が多かったことが分かった。さらにSNS映像が多用され、一連の報道を「ソーシャルメディア時代の戦争報道」と位置付けられることも判明した。
本稿校了時点で戦闘がやむ兆候は見られず、事態は長期化している。今回の調査は侵攻初期に焦点を当てたものだが、戦争報道の全体像をつかむためにはさらに長期間を対象にした調査や過去の戦争報道との比較も重要となる。