著者
肥山 詠美子 木野 康志 上村 正康
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.27-35, 2006-01-05
被引用文献数
2

物理学には, 数値計算上「少数粒子系のシュレーディンガー方程式を精密に解くこと」に帰着する課題が多い.これにより新しい物理的知見が得られる場合もある.この目的に役立つであろう方法の1つとして, 筆者らが提唱し発展させてきたガウス関数展開法を解説する.すべてのヤコビ座標のセットを用い, 各座標のガウス関数の積を基底関数(等比数列レンジ)として全系のハミルトニアンを対角化し固有関数を得る.これにより, 関数空間を十分広く取ることができ, 種々の物理的状況に精度よく対応できる.得られた固有関数を活用して, 散乱状態をも解くことができる.普遍性の高い解法であり, 原子分子からクオーク系の計算にまで適用されてきた.個々の技法の中には, 他の課題にも利用できるものもあろう.
著者
上村 正康 木野 康志
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

下記の研究を行い、これらを「ミュオン触媒核融合」に関する国際シンポジウム(スイス、1998年7月)と「超強度ミュオンビームと21世紀のミュオン科学」ワークショップ(KEK筑波、1999年、3月)において発表した。1) ミューオン触媒核融合におけるミュオン付着率の新しい計算を実行した。dtμ分子内核融合dtμ→α+n+μ,(αμ)+nにおけるαμ初期付着率(ωs)について、従来の計算における3つの近似(sudden近似をとること、dtμチャネルとαnμチャネルとのexplicitな結合を切ること、αn間の角運動量l=2をl=0と近似すること)を止めたsophisticatedな3体計算を行った。しかし、結果は従来の初期付着率をやや増加させた(核力入りで、ωs=0.92%から0.94%へ)。2) 理研-ラザフォード研の共同になる超高強度ミューオンビームを用いる将来の実験で、ダブルミューオン分子が初めて発見される可能性がある。これに先駆けて、非断熱的4体計算により、ダブルミューオン水素分子のエネルギーレベルを予言した。xyμμ,x,y=p,d,tのすべての分子について計算を行った。3) ttμミューオン分子イオンのエネルギーレベルと分子内核融合率の計算をおこなった。また、t^3Heμ分子イオンのエネルギーレベルと崩壊幅の計算を行った。4) ミュオン分子を含む任意3体系の束縛状態を計算する汎用プログラムを作成し、九大計算センターのライブラリプログラムとして登録した。また、ミュオン触媒核融合に関するレビュー論文を書き、レビュー誌に出版した。