著者
三谷 和男 若山 育郎 吉田 宗平 八瀬 善郎 上林 雄史郎 三谷 和合
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.83-98, 1989-10-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
27
被引用文献数
2 1

SMON患者は多彩な病像を呈するが, 疾病の長期化と加齢により漢方的に類似の証に収束する症例も見られる。このような一群の症例の中に「血痺」と捉え得る症例があり, 我々はこれまで黄耆桂枝五物湯加紅参煎剤を5例に6年間投与し, その効果を舌証を中心に検討した。5例全例で舌質の色調が淡紫紅色から淡紅色に変化し, 1例では地図状苔が一様な白浄苔となった。つまりSMONに特徴的な〓血証が全例で改善されたことが舌所見より明らかとなった。腹証でも, 臍下の抵抗等の改善を認めたが, 舌証ほど著明ではない。また, 神経学的にも知覚・運動共に改善を認め, その後の経過も良好である。副作用は, 現在認められていないが, 長期投与は加齢による影響を考慮し慎重に行う必要がある。