- 著者
-
小山 徹
許 勝英
上條 剛志
山本 基佳
菅沼 和樹
朱田 博聖
橋本 隆男
- 出版者
- 一般社団法人 日本救急医学会
- 雑誌
- 日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
- 巻号頁・発行日
- vol.23, no.2, pp.51-58, 2012-02-15 (Released:2012-03-20)
- 参考文献数
- 12
【目的】しびれを主訴に救急外来を受診する患者について,危険な責任病変に対する診断の的確性に関して検討する。【対象・方法】2009年1月1日から2011年3月31日までの2年3か月間で,当院の救急外来受診患者数は95,514人あり, そのうち電子カルテの検索ソフトを利用し,しびれの記載のある約7,500人の電子カルテを調べ,「症状が1か月以内に発生し,外傷に関係ない,主訴がおよそしびれ単独の症例」を抽出した。【結果】抽出した対象症例は433例で受診後および入院後に危険な責任病変が診断できたものは57例(13.2%)あった。内訳は脳出血2例,硬膜動静脈瘻による硬膜外血腫1例,脳幹出血3例,脳梗塞26例,脳幹梗塞14例,多発性硬化症1例,頸椎症3例,頸椎椎間板ヘルニア1例,頸髄腫瘍1例,脊髄炎1例,脊髄梗塞1例,急性下肢動脈閉塞1例,高カリウム血症1例,ギランバレー症候群1例だった。しびれの部位と危険な責任病変の診断率に関して検討すると,A群(片側上下肢,片側上肢または下肢+顔面,顔面単独)125例,B群(片側上肢,片側下肢)181例,およびC群(両上肢,両下肢,四肢)116例において,もし頭部CTを先に行った場合,それぞれ37例(A群125例中29.6%),9例(B群181例中5.0%),4例(C群116例中3.4%)において危険な責任病変を診断できないものと推測された。引き続き頭部MRIを施行すると,それぞれ3例(2.4%),2例(1.1%),4例(3.4%)において危険な責任病変を診断できないものと推測された。【結語】とくにしびれの分布が片側上下肢の場合,脳出血や脳梗塞はしびれの危険な責任病変として最も重要である。しかし,緊急で頭部CTと拡散強調画像を含む頭部MRIを施行しても,1.1%から3.4%において危険な責任病変を診断できない可能性があるものと推測された。